それらすべてが愛になる
 結局夜中に目を覚ましてからは、短い間に寝たり起きたりを繰り返して、明け方に洸が帰ってきた気配を感じてからは完全に覚醒してしまった。

 洸が部屋に戻り出てこないことを確認してから、しばらく時間が経つのを待ってからそっと部屋を出る。

 キッチンに移動して冷蔵庫を開けると、昨日買った食材が買い物袋ごと入れられていた。
 とりあえず冷蔵庫に入れなきゃという意識だけはあったんだな、と昨夜の自分の行動を振り返って少し滑稽に思える。

 それなりの重さのある買い物袋から、ナスや玉ねぎ、ズッキーニなどの野菜と、ベーコン、トマトの水煮缶を取り出す。
 今日の朝は一緒に朝ごはんを食べようと思って考えていた、ミネストローネを作ることにした。

 昨日買った野菜をすべて一cm角に切る。黙々と食材を切る作業は少しの間だけ無心になれた。

 鍋で中で具材を炒めて煮込む。洸は酸味が強いのが苦手なので、和らげるために玉ねぎを多めに、そして砂糖をひとつまみ入れる。

 「おはよう、早いな」

 「おはようございます、何だか今日は早く目が覚めちゃって」

 ちゃんと笑顔を作れているだろうか。

 不自然にならないよういつも通りを言い聞かせながら意味もなく鍋をかき混ぜていると、洸が鍋の中を覗いた。

 「あ、スープにパスタ入ってる」

 かき混ぜた中からファルファッレというリボン型のショートパスタが見えて、洸はトーストは焼かずにスープ皿を取り出した。

 起きてきた洸が、冷蔵庫からミントウォーターを飲みながら鍋やフライパンの中を覗いて、棚からその日の朝食に合う食器を出して並べたり、時にはパンを焼いたりごはんをよそったりする。
 清流がおかずを盛っている間に、洸は二人分のカップを出してコーヒーマシンをセットする。

 お互いにこうしようと決めたわけではないけれど、気がついたらいつからかルーティンになっていた。

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