優しくしないで、好きって言って

***



「七瀬さん、覗き見なんて悪趣味ですよ?」

「うるさい」


 幼なじみとして?

 許婚として?

 そんな建前なんていらない。


 茂みに隠れながら息をひそめる。

 見つめる先は、水道前にいる男女二人。

 ただ気になるから、私はこうするんだ。


「あと10分は流水で冷やそうか」

「ありがとう、綾城くん」


 ふとそんな二人の会話が聞こえてきて、自然と耳に意識が集中する。


「綾城くんって、やっぱり優しいね」

「普通だよ」

「もー、そういうところが優しいっていうんだよ?」


 花が咲いたように明るい笑い声。

 見るからに楽しそうな表情が、目に色濃く映る。

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