優しくしないで、好きって言って
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「七瀬さん、覗き見なんて悪趣味ですよ?」
「うるさい」
幼なじみとして?
許婚として?
そんな建前なんていらない。
茂みに隠れながら息をひそめる。
見つめる先は、水道前にいる男女二人。
ただ気になるから、私はこうするんだ。
「あと10分は流水で冷やそうか」
「ありがとう、綾城くん」
ふとそんな二人の会話が聞こえてきて、自然と耳に意識が集中する。
「綾城くんって、やっぱり優しいね」
「普通だよ」
「もー、そういうところが優しいっていうんだよ?」
花が咲いたように明るい笑い声。
見るからに楽しそうな表情が、目に色濃く映る。