優しくしないで、好きって言って
「瑛大!」
パチッ! と勢いよく開いた瞼。
瞬間──視界に飛び込んできたのは、さっきまで必死になって追いかけていたその少年……ではなく。
「お、やっと目を覚まされましたね」
オールバックの黒髪に、切れ長の目。
そんな、よく見慣れた男の顔で。
「……っ」
一瞬の間のあと、状況を理解した私は大きく目を見開きわなないた。
「きゃーーーーーーっ!」
「おはようございます、お嬢様」
思わず飛び出た悲鳴に驚くこともせず、その男は爽やかな朝に相応しい、にっこりとした笑顔をこっちに向けていた。