優しくしないで、好きって言って

「なっ、なによ」

「……や、かわいいなって」

「なっ……!」


 かあっと一気に体温が上がるとともに、思い切り振り返った。

 すると、否応なしに目に飛び込んできたのは、片腕で口元を隠しながら肩を震わせる瑛大の姿で。


「ほら、ちゃんと前向いて。あとは冷風かけてブラッシングすれば終わりだから」

「……」


 ちょっと不服だ。何がそんなにおかしいのか、私にはわからない。


 前を向き直すと、程なくして温風が冷たい風に切り替わった。

 それから数分後、ブラシに持ち替えた瑛大が私の髪を優しく梳かし始めた。


「痛くない?」

「うん、大丈夫……」


 それより、なんか……気持ちいい。

 少し擽ったい気もするけれど、不快感は全くなくて。

 寧ろ触られている部分が不思議と心地よく感じる。


「七瀬の髪って、綺麗だよな」


 ──ドクンッ。

 その瞬間、心臓が大きく脈を打った。

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