エリート役員は空飛ぶ天使を溺愛したくてたまらない
 ではJSAは五十里にとって自社の飛行機が導入される会社なのかもしれないのだ。
 普通の客よりもJSAに思い入れを持ってくれている可能性がある。
 ──いい人だな……。
 莉桜は単純にそう思っていた。

 今回のフライトはステイと言って現地での宿泊を伴ったものだった。羽丘国際空港を夕刻経った便は約十二時間の飛行時間で同日の夕刻シカゴに到着する。
 シカゴにある空港は利用者数もアメリカ国内で三本の指に入るくらいで、かつては「最も混雑する空港」としてギネス認定されていたという空港だ。八本もの滑走路を有している巨大空港なのである。

 今日もJSAの有名パイロットである貴堂キャプテンは安定感のある着陸を見せ、莉桜は心の中で喝采を送っていた。
 デブリーフィングという搭乗を終えた際の打ち合わせを機内で済ませた莉桜たちクルーは今日宿泊するホテルに行くため、クルーシャトル乗り場に制服のまま向かう。

 現地でのクルーの過ごし方はいろいろだ。どうしても時差のある仕事なので、時差に身体を合わせる方法もそれぞれ違う。
 あくまでも日本時間で過ごす人もいれば、現地時間に合わせる人もいるが、莉桜は現地時間に合わせる派だった。

「倉木さん、夜は一緒に食べに行かない?」
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