本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます ~side story ~
亮平 66
鈴音を車で送った後、誰もいない家に帰宅してきた。リビングの電気とエアコンをつけると、ソファの上にスマホを投げつけ、そのままゴロリとソファに横になった。
「ふぅ~…」
天井を眺め、思わず大きなため息が出てしまう。鈴音の言葉が頭をよぎる。
『なら今度お姉ちゃんをドライブにでも誘ってあげなよね。何か私ばかり乗せて貰っている気がするから……』
「俺がドライブに誘いたいのはお前だけなのに……」
その時、頭の上に置いてあるスマホが着信のメロディを鳴らした。
「もしかして鈴音か?」
微かな期待に体を起こしてスマホを手にすると、着信相手は川口だった。
「何だ……川口かよ……」
ピッ
スマホをタップすると耳元に当てた。
「もしもし……」
『こんな時間にすまない。今、少し時間いいか?』
「ああ、いいぞ」
『今日、就任式が終わって名実ともに川口家電の社長になったんだ』
「ああ、そうかい。おめでとう。それで常盤社長は何と言った?」
『社長はもう婚約の件は無かったことにしてもいいと言ったけど、どうしても彼女の方が納得しないんだ。酷く泣かれて恥をかかせるつもりなのかと罵られたし……。だけど俺は君を好きにはなれないし、これからもそうなる事は無いとはっきり断ったんだ』
「おいおい……お前、なかなか酷い人間だな。普通そこまで言えるか?」
『仕方ないだろう? 俺が好きなのは鈴音だけなんだから……!』
「そうか、それで相手の女は何て言った?」
『2月に結婚する事になっていたのにどうしてくれるんだと激しく責められたけど、元から俺は結婚なんかしたくなかったとはっきり意思を表明したんだ。するとようやく納得してくれたんだよ。だったら結婚の話しは延期になった様にカモフラージュするように要求してきたんだよ。2人のスケジュールが合わなくて今は式を挙げられなくなったことにしろって言って来たんだ』
「ふ~ん……成程」
『半年もあれば世間のほとぼりも覚めるだろうからその頃に正式に婚約話が破綻したことにしてくれと言われたんだ。結婚まで決まっていたのに、全てを無かった事にするのなら、それ位の誠意を見せてもいいんじゃないかって言われたよ。本当は今すぐ婚約解消したかったのに……』
川口の話し方には悔しさがにじみ出ているように感じた。
「ふ~ん。つまり、半年後正式に婚約解消した後に……ひょっとして今度は鈴音の元へ戻るつもりなのか?」
確認の為、尋ねた。
『ああ、勿論そのつもりだ』
「そうか……」
川口と話をしていた俺は頭がズキズキと痛んできた。半年後、川口は再び鈴音の前に現れて……。
「鈴音にプロポーズするつもりなのか?」
『ああ、当然だろう? その為に今まで俺は必死になって頑張って来たんだから』
「そうかよ。……せいぜい頑張るんだな。話はそれだけか? 明日も朝が早いんだ。用件がもう無いなら切るぞ」
『あ、ああ……ごめん。悪かったな。それじゃ切るよ』
「ああ。じゃあな」
短くそれだけ言うと、スマホを切って再びソファの上に放り投げた。川口は、あんな事言っていたけれど……。俺だって鈴音が好きだ。もうこの気持ちを抑える事が出来ない。半年後……川口は鈴音にプロポーズする。なら、俺だって鈴音にプロポーズするんだ。もう鈴音に対する好意を隠すのはやめだ。今の俺の立場は川口よりは優位に立っているんだ。少しずつ鈴音との距離を縮めていき、幼馴染という垣根をとりはらうんだ。そうすれば鈴音だって俺の事をただの幼馴染としてではなく、いつかは恋愛感情を持って見てくれるようになるかもしれない……。
「見てろよ……俺は負けないからな……」
川口に対して密かに闘志を燃やした――
「ふぅ~…」
天井を眺め、思わず大きなため息が出てしまう。鈴音の言葉が頭をよぎる。
『なら今度お姉ちゃんをドライブにでも誘ってあげなよね。何か私ばかり乗せて貰っている気がするから……』
「俺がドライブに誘いたいのはお前だけなのに……」
その時、頭の上に置いてあるスマホが着信のメロディを鳴らした。
「もしかして鈴音か?」
微かな期待に体を起こしてスマホを手にすると、着信相手は川口だった。
「何だ……川口かよ……」
ピッ
スマホをタップすると耳元に当てた。
「もしもし……」
『こんな時間にすまない。今、少し時間いいか?』
「ああ、いいぞ」
『今日、就任式が終わって名実ともに川口家電の社長になったんだ』
「ああ、そうかい。おめでとう。それで常盤社長は何と言った?」
『社長はもう婚約の件は無かったことにしてもいいと言ったけど、どうしても彼女の方が納得しないんだ。酷く泣かれて恥をかかせるつもりなのかと罵られたし……。だけど俺は君を好きにはなれないし、これからもそうなる事は無いとはっきり断ったんだ』
「おいおい……お前、なかなか酷い人間だな。普通そこまで言えるか?」
『仕方ないだろう? 俺が好きなのは鈴音だけなんだから……!』
「そうか、それで相手の女は何て言った?」
『2月に結婚する事になっていたのにどうしてくれるんだと激しく責められたけど、元から俺は結婚なんかしたくなかったとはっきり意思を表明したんだ。するとようやく納得してくれたんだよ。だったら結婚の話しは延期になった様にカモフラージュするように要求してきたんだよ。2人のスケジュールが合わなくて今は式を挙げられなくなったことにしろって言って来たんだ』
「ふ~ん……成程」
『半年もあれば世間のほとぼりも覚めるだろうからその頃に正式に婚約話が破綻したことにしてくれと言われたんだ。結婚まで決まっていたのに、全てを無かった事にするのなら、それ位の誠意を見せてもいいんじゃないかって言われたよ。本当は今すぐ婚約解消したかったのに……』
川口の話し方には悔しさがにじみ出ているように感じた。
「ふ~ん。つまり、半年後正式に婚約解消した後に……ひょっとして今度は鈴音の元へ戻るつもりなのか?」
確認の為、尋ねた。
『ああ、勿論そのつもりだ』
「そうか……」
川口と話をしていた俺は頭がズキズキと痛んできた。半年後、川口は再び鈴音の前に現れて……。
「鈴音にプロポーズするつもりなのか?」
『ああ、当然だろう? その為に今まで俺は必死になって頑張って来たんだから』
「そうかよ。……せいぜい頑張るんだな。話はそれだけか? 明日も朝が早いんだ。用件がもう無いなら切るぞ」
『あ、ああ……ごめん。悪かったな。それじゃ切るよ』
「ああ。じゃあな」
短くそれだけ言うと、スマホを切って再びソファの上に放り投げた。川口は、あんな事言っていたけれど……。俺だって鈴音が好きだ。もうこの気持ちを抑える事が出来ない。半年後……川口は鈴音にプロポーズする。なら、俺だって鈴音にプロポーズするんだ。もう鈴音に対する好意を隠すのはやめだ。今の俺の立場は川口よりは優位に立っているんだ。少しずつ鈴音との距離を縮めていき、幼馴染という垣根をとりはらうんだ。そうすれば鈴音だって俺の事をただの幼馴染としてではなく、いつかは恋愛感情を持って見てくれるようになるかもしれない……。
「見てろよ……俺は負けないからな……」
川口に対して密かに闘志を燃やした――