本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます ~side story ~
川口直人 19
あの夜から1周間近い日数が経過していた。
「今日も連絡が来なかったか……」
仕事の帰り道、思わずため息をついてしまった。あの後、すぐに謝罪の手紙と自分のスマホの電話番号とアドレスを書いてポストに入れたのに、加藤さんからはまるきり音沙汰が無かった。
「嫌われてしまったか……」
再び深い溜め息が出てしまう。こんな風に避けられてしまうなら、初めから親しくしなければ良かっただろうか? ただのご近所さんとして挨拶だけですます仲になっていたなら、辛い気持にならずに済んだだろうか……。
「もう、彼女の事は忘れたほうがいいのかもしれない……」
ポツリと呟き、マンション目指して歩き続けた――
****
「え……?」
「あ……!」
あろうことか、マンションの前で加藤さんに偶然会うことが出来た。
「こんばんは、加藤さん」
さっきまであれ程落ち込んでいたのに、加藤さんの姿を見るだけで顔に笑みが浮かんでしまう。
「こ、こんばんは……」
加藤さんはバツが悪いのか少し伏し目がちに挨拶してきた。それにしても一体どういう事だろう? 加藤さんは大きなボストンバッグを手にしている。
「加藤さん。何処かへ出掛けるの?」
つい、気になって尋ねてしまった。
「う、うん。ちょっとね……」
加藤さんの口調が重い。それに何だか浮かない表情をしている。
「そう……」
「……」
気まずい雰囲気が流れる。本当はこのままマンションに入るべきなのだろうが、それがどうしてもできない。それどころか、先程から俺は加藤さんに尋ねたいことがあった。
「ひょっとして……引っ越すの?」
「え? ま、まさかっ! た、ただ少しの間実家から職場に通おうかと思って。あ、でも時々はマンションの様子を見に部屋に戻るつもりだし……」
加藤さんが俺に事情を話してくれた! 良かった……。別に拒絶されていたわけでは無かったのかもしれない。
「そうなんだ? 重そうだね。その荷物。駅まで持って行ってあげるよ。貸して?」
俺は有無を言わさず加藤さんの手からボストンバッグを取り上げた。
「あ、あの……。荷物なら自分で持てるから……」
「いいからいから、遠慮しないでよ」
だって、そうすれば駅まで一緒にいられるから。こうして一緒に歩いていられるだけで満足だった。そして俺と加藤さんは無言で駅まで歩き続け……ついに改札まで来てしまった。それが無性に悲しかった。
その時。
「あ、あの。荷物、どうもありがとう」
背後から加藤さんの声が聞こえてきた。俺は無言で振り返る。
「加藤さん」
「な、何?」
「ひょっとして俺……迷惑だった?」
「え……?」
駄目だ、自分の溢れ出す気持ちを止めることが出来なかった。こんな事言っては加藤さんを困らせるだけだ。分かっていても勝手に言葉が口をついて出てしまう。
「俺の事……迷惑に思ったから連絡もくれなかったのかな? そして、あのマンションを出るのも……」
「そ、それは違うから……っ!」
加藤さんの目が一瞬大きく見開かれ、両目から涙が滲み出してきている。
「加藤さん?」
俺は彼女を泣かせることを言ってしまったのか?
「ごめん」
頭を下げた。俺は最低だ……好きな女性を泣かせてしまうなんて……。
「え? 何で謝るの?」
「だって……加藤さん泣いているから。俺……泣かすつもり、全く無かったのに……」
「ううん、この涙は……そ、その……違うから。川口さんのせいなんかじゃないから」
本当に? そうだろうか? でも今は荷物を返さないと。
「‥…はい、荷物」
「あ、ありがとう」
加藤さんに荷物を手渡すと、俺は自分の正直な気持ちを伝えた。
「加藤さん。俺は……加藤さんさえ良かったら特別な関係になりたいと思っていたんだ。ただのご近所さんでなければ知り合いでも無く……」
「……」
加藤さんは黙って聞いている。それはそうだろうな……傍から聞けばまるで告白のようにも取れるのだから。
「でも今の加藤さんは俺の事を考えられる余裕もなさそうだね」
加藤さんに笑いかけた。
「ごめんなさい……」
まるで消え入りそうな加藤さんの声につい、溜息をついてしまった。
「別に謝らないでよ。俺の方が余程加藤さんに迷惑を掛けちゃったんだから。だからもし相談したい事があるなら俺で良ければ話に乗るよ。少しでも加藤さんの力になりたいからさ」
だからもっと頼って欲しい……。
「川口さん……」
加藤さんはさらに困った表情で俺を見た。
「ごめんね。引き留めちゃって。それじゃ気を付けて実家に帰ってね」
これ以上迷惑に思われたくない……。加藤さんから背を向けると、再びマンションへ足を進めた――
「今日も連絡が来なかったか……」
仕事の帰り道、思わずため息をついてしまった。あの後、すぐに謝罪の手紙と自分のスマホの電話番号とアドレスを書いてポストに入れたのに、加藤さんからはまるきり音沙汰が無かった。
「嫌われてしまったか……」
再び深い溜め息が出てしまう。こんな風に避けられてしまうなら、初めから親しくしなければ良かっただろうか? ただのご近所さんとして挨拶だけですます仲になっていたなら、辛い気持にならずに済んだだろうか……。
「もう、彼女の事は忘れたほうがいいのかもしれない……」
ポツリと呟き、マンション目指して歩き続けた――
****
「え……?」
「あ……!」
あろうことか、マンションの前で加藤さんに偶然会うことが出来た。
「こんばんは、加藤さん」
さっきまであれ程落ち込んでいたのに、加藤さんの姿を見るだけで顔に笑みが浮かんでしまう。
「こ、こんばんは……」
加藤さんはバツが悪いのか少し伏し目がちに挨拶してきた。それにしても一体どういう事だろう? 加藤さんは大きなボストンバッグを手にしている。
「加藤さん。何処かへ出掛けるの?」
つい、気になって尋ねてしまった。
「う、うん。ちょっとね……」
加藤さんの口調が重い。それに何だか浮かない表情をしている。
「そう……」
「……」
気まずい雰囲気が流れる。本当はこのままマンションに入るべきなのだろうが、それがどうしてもできない。それどころか、先程から俺は加藤さんに尋ねたいことがあった。
「ひょっとして……引っ越すの?」
「え? ま、まさかっ! た、ただ少しの間実家から職場に通おうかと思って。あ、でも時々はマンションの様子を見に部屋に戻るつもりだし……」
加藤さんが俺に事情を話してくれた! 良かった……。別に拒絶されていたわけでは無かったのかもしれない。
「そうなんだ? 重そうだね。その荷物。駅まで持って行ってあげるよ。貸して?」
俺は有無を言わさず加藤さんの手からボストンバッグを取り上げた。
「あ、あの……。荷物なら自分で持てるから……」
「いいからいから、遠慮しないでよ」
だって、そうすれば駅まで一緒にいられるから。こうして一緒に歩いていられるだけで満足だった。そして俺と加藤さんは無言で駅まで歩き続け……ついに改札まで来てしまった。それが無性に悲しかった。
その時。
「あ、あの。荷物、どうもありがとう」
背後から加藤さんの声が聞こえてきた。俺は無言で振り返る。
「加藤さん」
「な、何?」
「ひょっとして俺……迷惑だった?」
「え……?」
駄目だ、自分の溢れ出す気持ちを止めることが出来なかった。こんな事言っては加藤さんを困らせるだけだ。分かっていても勝手に言葉が口をついて出てしまう。
「俺の事……迷惑に思ったから連絡もくれなかったのかな? そして、あのマンションを出るのも……」
「そ、それは違うから……っ!」
加藤さんの目が一瞬大きく見開かれ、両目から涙が滲み出してきている。
「加藤さん?」
俺は彼女を泣かせることを言ってしまったのか?
「ごめん」
頭を下げた。俺は最低だ……好きな女性を泣かせてしまうなんて……。
「え? 何で謝るの?」
「だって……加藤さん泣いているから。俺……泣かすつもり、全く無かったのに……」
「ううん、この涙は……そ、その……違うから。川口さんのせいなんかじゃないから」
本当に? そうだろうか? でも今は荷物を返さないと。
「‥…はい、荷物」
「あ、ありがとう」
加藤さんに荷物を手渡すと、俺は自分の正直な気持ちを伝えた。
「加藤さん。俺は……加藤さんさえ良かったら特別な関係になりたいと思っていたんだ。ただのご近所さんでなければ知り合いでも無く……」
「……」
加藤さんは黙って聞いている。それはそうだろうな……傍から聞けばまるで告白のようにも取れるのだから。
「でも今の加藤さんは俺の事を考えられる余裕もなさそうだね」
加藤さんに笑いかけた。
「ごめんなさい……」
まるで消え入りそうな加藤さんの声につい、溜息をついてしまった。
「別に謝らないでよ。俺の方が余程加藤さんに迷惑を掛けちゃったんだから。だからもし相談したい事があるなら俺で良ければ話に乗るよ。少しでも加藤さんの力になりたいからさ」
だからもっと頼って欲しい……。
「川口さん……」
加藤さんはさらに困った表情で俺を見た。
「ごめんね。引き留めちゃって。それじゃ気を付けて実家に帰ってね」
これ以上迷惑に思われたくない……。加藤さんから背を向けると、再びマンションへ足を進めた――