【完結】失恋したら有名シェフが私を溺愛包囲網で包み込みます。


「二年? クズに騙されて二年も付き合ってたのか?」

「はい。……もう、無駄になりましたけど」

「無駄、ね……」

 何かを考え込むような顔をしている烏丸さんに、私は「言われたんです、彼に。私とのセックスが……つまらないって」なんて、いらぬことまで話してしまった。

「え?」

「あ、すみません!余計なことを言ってしまいましたね」

 私は再びハンバーグを手を伸ばす。

「うん、やっぱり美味しい」

 烏丸さんは、そんな私の手を「豊佳」とそっと掴んだ。

「……え?」

 私はそれに驚いて烏丸さんの顔を見る。

「あの、烏丸さん……?」

 すると烏丸さんは、「豊佳さ……俺のこと好きになれば?」と私に言うのだった。

「……はい?」

「俺のこと、好きになったらいいじゃん。 そしたらあんなクズ男、忘れられるだろ?」

 好きになったらって……そんな簡単に……。

「好きになるって……烏丸さんをですか?」

「そう。俺のこと、好きになれば?」

「そ、そんな簡単に言わないでください。 そんな簡単に……好きになれる訳、ないですって」

 烏丸さんとは今日初めて会ったのに、いきなり好きになればなんて……何を言い出すのだろうか。
 私のこと……からかってるの?

「俺はなれるよ、好きに」

「……えっ?」

 私の頬に手を伸ばす烏丸さんは、私の頬を撫でながら「俺は豊佳のこと、好きになれるけど」と私に告げる。

「冗談……やめてください」

「冗談じゃないよ。俺は本気だよ」
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