【完結】失恋したら有名シェフが私を溺愛包囲網で包み込みます。


「え、もう終わりですか!?」

「大変申し訳ございません。本日の営業時間が十四時までとなっておりまして」

「えーそうなんですか!?……じゃあ仕方ないですね」

 せっかく翡翠さんのハンバーグを楽しみにしてくださっていたであろうお客様にこんなことを伝えないとイケないのは、本当に心苦しいけど、仕方ない。

「大変申し訳ございません。本日シェフの烏丸にご予定がありまして」

「わかりました。 また来ます」

 残念そうなお客様に私は、翡翠さんから渡されたあるものを渡すことにした。

「細やかなお詫びではありますが……こちら、シェフの烏丸からでございます。どうぞお受け取りください」

「なんですか?」

 そのお客様に小さな封筒をお渡しする。

「こちらは次回の来店時にお出しください。 デザートの無料券でございます」

「えっ!? デザートの無料券、ですか!?」

「はい。シェフの心からのお詫びだそうですので、ぜひお受け取りください」

 そのお客様は「ええ、本当にいいんですか?」と言っていたが、「ありがとうございます。また絶対に来ます!」と嬉しそうに微笑んでいた。

「ぜひお待ちしております。 ありがとうございます」

 その他に並んでいるお客様にも同じデザートの無料券をお渡し、なんとかその場を凌ぐことが出来た。
 恐るべし、翡翠さん効果……。デザートの無料券だけでこんなに喜ばれるなんて、さすがだ。

「翡翠さん、デザートの無料券好評みたいだよ」

「そうか。それは良かった」
< 83 / 103 >

この作品をシェア

pagetop