【完結】失恋したら有名シェフが私を溺愛包囲網で包み込みます。
翡翠さんのあのハンバーグの味には、翡翠さんのおじいちゃんの想いと努力がたくさん詰まってるんだなって思うと、なんかしみじみしちゃう。
「きっとじいちゃんが亡くなる時、あのレシピ本を俺に託してくれたんだと思うんだ」
「え……?」
私は翡翠さんの横顔を見上げる。
「亡くなる直前にさ、じいちゃんは俺に言ってくれたんだよ。 翡翠なら絶対に、俺のレシピを完成させることが出来るって、そう言ってくれたんだ」
私は翡翠さんの手をそっと握ると、「翡翠さんにとっては……いいおじいちゃん、だったんだね」と呟いた。
「ああ、俺の自慢のじいちゃんだ」
翡翠さんは私に向かって微笑んだ。
「でもそのおじいちゃんのレシピが、ちゃんと翡翠さんに受け継がれていってること、おじいちゃんはきっと喜んでくれてると思うよ」
「そうだといいけどな」
「絶対にそうだよ。きっと翡翠さんのこと、自慢の孫だーって思ってると思うよ」
翡翠さんはしっかりとおじいちゃんの意志を受け継いで、あのハンバーグを今でも作り続けていってる。
それって本当に簡単なことじゃないと思うし、苦労することだと思う。
「私は、そんな翡翠さんのことを尊敬してる」
「ん?」
「翡翠さんが今日まで何年もやってきたことは、決してムダなんかじゃなかったってこと、もう証明してるでしょ? だから、本当にすごいなーって思ってるし、その努力と苦労に尊敬してる」
翡翠さんは私の頭に手を乗せると「ありがとう、豊佳」と照れくさそうに笑った。