Summer Love
お前ら……… 修先生目線
「さぁ、ちゃーんと片付けといてね」
朝の七時。
8月初日に、仕事は始まった。
結局、呆気なく校長から許可がおりて、住み込みで働くことになった俺。
正直、「かなり」動揺してる。
だって、研修ってのは絶対に行かないといけないぐらい重要なことなのにーーー校長は、許したのだ。
本当に怖い………何か裏があるような気がする。
だけど本当に裏があるとして、その真実を知る権利は俺になさそうで………。
「母さん」
「どうしたの?修?」
真っ赤に染めた、ショートボブの髪がさらりと動いた。
このくらいパンチがある親は、世界に唯一人と思うくらい髪が太陽の光によって輝く。
「ーー記憶喪失の事で、何か繋がってないか?」
そう考えるしか、この状況はどうにも理解しがたい。
俺は、新任前の教師だった頃、交通事故を起こしたっきり記憶を少し失っている。
事件の状況や、その数年前の記憶がすっぽりと抜け落ちているのだ。
それは残酷にも、友達の顔や、当時の同僚の記憶もない。
何年も眠りについていたというわけではない。
事故に遭った数日後に目を覚ましていたら、こうなっていたのだ。
俺の全ての記憶とも言える、教師をやっていくための大切な理由も、この一件で消え失せた。