御曹司は優しい 音色に溶かされる
ゆりえはこの戸建ての日本家屋に一人で
住んでいる。

子供のころに相次いで両親を亡くした
ゆりえは一人っ子だったので助け合える兄弟
もいなかった。

父の実家は名のある実業家で母との結婚に
反対されて、二人は駆け落ち同然にして
結婚したらしい。

父はゆりえが五歳の時に病気で亡くなった。

母は一応知らせたらしいが、父方の実家は
葬義にも誰も来なかった。

母はその後、女手一つで働きながらゆりえを
育ててくれた。

二人は東京を離れて札幌に居を移していたので
東京に住む母方の祖父母にはなかなか会えず、
母は一人で頑張っていた。

そんな境遇でもピアノが好きなゆりえの為に
中古ピアノを父が買ってくれて三歳から
ゆりえはずっとピアノを習っていたのだ。

ゆりえが十歳の時 無理がたたったのだろう
母は、職場で突然倒れてそのまま帰らぬ人
となった。

ゆりえはかろうじて東京の祖父母に連絡が
できたが、それ以外の事は今でもあまり
思い出せない。

近所の人や母の職場の人が葬義やその他
もろもろの手続きをやってくれたらしい。
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