The previous night of the world revolution4~I.D.~
ルルシーとルリシヤから連絡が入ったのは、二人がヘールシュミット邸から逃れて、二日が過ぎた深夜だった。

隠しておいた方の携帯が、振動した。

「…はい」

『…』

相手は、無言だった。

本当に電話の相手が私であるかは、彼らには分からないのだから、仕方ないとも言える。

それに、彼らにしてみれば、盗聴の心配もあるだろう。

それだけ慎重を期しているということだ。

「華弦です。盗聴の心配はないので、普通に話してください」

『…そうか。なら安心して話そう。今、そちらは一人か?』

「はい。私一人だけです。そちらはお二人ですか?」

『あぁ。二人で聞いてるよ』

「分かりました。まずは、無事に逃げおおせたことを喜びましょう」

この二人なら逃げられるとは思っていたが。

万一にも追っ手に捕まるかもしれないと、少し心配していたのだが…その心配は不要だったようだ。

「それで、あなた方は今、何処に?」

『…さすがにそれは言えないな。我々は、まだお前の協力が罠である可能性を捨てきれていない』

成程。それはそうだろう。

「では、何処にいても構いません。ただし、速やかにその場を離れてください」

『…何?』

「アシミムがルレイア・ティシェリーを使って、あなた方の捜索を始めました。見つかる前に逃げてください」

『…成程。忠告、感謝する』

今のところ、二人の潜伏先を見つけた、という情報は入っていない。

だが、このまま二人が潜伏先を変えなかったら…いずれ、見つかる恐れがある。

そうなっては、全てが終わりだ。

『…それで…俺達としては、君の目的や正体を、一刻も早く聞きたいところなんだが?』

「分かっています。それについては、直接会って話がしたい」

『ほう。そう言って俺達を呼び出し、ホイホイ行った先には大軍が待ち構えている…なんてことにならない保証は何処に?』

もっともな懸念だ。

向こうからすれば、私はまだまだ、信用ならない敵の手下なのだ。

「ありません。変わりと言ってはなんですが…。待ち合わせするポイントは、そちらが決めてくださって結構です」

『君がルシードや、他の仲間を連れてこない保証は?』

ルレイアを、とは言わなかった。

だが、言いたいことは分かる。

「ありませんね。ですから代わりに、今ここで…アシミムのことを、少し」

『…何だ?』

「アシミムの目的は、叔父から王位を取り返すことではありません。彼女は、叔父が人質にした弟を取り戻す為に、叔父を暗殺しようとしているのです」

『…!?』

…さすがに、驚いているようだな。

まぁ、作り話にしては…いささか突拍子もなさ過ぎるだろう。
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