The previous night of the world revolution4~I.D.~
ヘールシュミット邸に戻り、アシミムの顔を見たとき。

俺は、衝動的にぶん殴りたくなるのを必死に堪えた。

「お帰りなさい。ルシファー」

その名前で呼ばれるのも、心底腹が立った。

気持ち悪い名前で、俺を呼ぶな。

「二人の脱走者は捕まえましたの?それとも、殺してしまいましたの?」

「申し訳ありません…。俺が着いたときには、ホテルはもぬけの殻で…」

あくまで、二人は見つけられなかったことにする。

思い出せ。俺はランドエルスで、うぜぇ高校生相手を、完璧に騙してみせた。

あのとき培った演技力を、今こそ活かすべきだ。

「あら。逃げられましたの?」

「…申し訳ありません」

俺は、殊勝に頭を下げてみせた。

「そうですの…。いきなり王都に姿を現したと思ったら…もう逃げたんですの。一体、何をしに王都まで来たんでしょうね」

「はい…。奴らが何かを企んでいる可能性があります。引き続き調査を続けます」

「お願いしますわね。今度こそ、二人を捕まえてちょうだい。これ以上邪魔をされたくありませんわ」

尊大な態度があまりにもうざいから、その縦ロール掴んで引っ張ってやろうかと思った。

必死にその衝動を抑え、俺は深々と頭を下げた。

…この女、絶対にタダでは済まさん。

俺とルルシーの愛の絆を絶とうとした…この報いは、必ず受けてもらう。
< 290 / 580 >

この作品をシェア

pagetop