The previous night of the world revolution4~I.D.~
本人が、あまり上手くはない、と宣言した通り。

大変失礼ながら、この青年はあまり強い相手ではなかった。

と言うか、単純に慣れていないのだろう。

ルールは一通り知っているものの、若干素人感が否めない。

それなのに弱い相手だと思えないのは、彼が負けているにも関わらず、表情の一つも変わっていないからだろう。

この人、負けることはどうでも良いのだろうな。

それよりも、俺と同じテーブルにつくことが大事なように見える。

何を考えているかいまいち分からないが…。

まぁ、負けても良いくらいには金に余裕があるのだろう。

こんな豪華客船に、ガイドを気取れるほど何度も乗っているのなら、そりゃ金持ちだろう。

かといって、よくいる成金的な印象は見受けられない。

一体何を本職にしているのだろうと思ったが、それは俺達にも当てはまることか。

すると。

「貴殿は、ルティス人なんだろう?」

負けまくっているにも関わらず、彼は声色も変えずにそう聞いてきた。

「あぁ、そうだが」

「それなのにシェルドニア語が分かるとは、珍しいな。余程高度な教育を受けているとお見受けする」

「…それほどでもないつもりだがな」

実は俺は貴族の出身で…などと、とても言う気にはなれない。

ルレイア先輩ではないが、俺は自分の出自が好きではないからな。

「『白亜の塔』で見たときは三人組だったが…今回の旅は、三人で来たのか?」

「あぁ。三人旅だ」

「そうか…。友人同士で?」

…随分と、根掘り葉掘り聞きたがるな。

「先輩達の付き添いだ。そちらは?一人旅なのか」

「…そうだな」

「随分と旅慣れているようだな。ルティス語を話せるとは。シェルドニアでは珍しいだろう」

青年は答えず、ただ黙って頷いた。

…人には根掘り葉掘り聞いてくるのに、自分が質問されるのは嫌いなようだ。

まぁ、露骨に聞いてしまったからな。気を悪くしたか。
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