The previous night of the world revolution4~I.D.~
「ひっく…ひっく…」

「よしよし、そんなに泣かないでください…」

俺はシュノさんの傍らに寄り添って、彼女の髪を撫でてあげた。

可哀想に。

気の毒だけど、こればかりはどうしてあげることも出来ない。

何とか泣き止ませようと、こうして傍に寄り添っているのだけど…。

やっぱり、そう簡単に癒してあげることは出来ないようだ。

すると。

「おーいシュー公~。ルレ公~、皆でルル公ん家に…って、どったんだシュー公!?」

部屋に入ってきたアリューシャが、泣きじゃくるシュノさんを見て、ぎょっとしていた。

更に、アリューシャの後ろから入ってきたアイズレンシア、ルルシー、ルリシヤの三人も、泣きじゃくるシュノさんに驚いていた。

それもそうだろう。

シュノさんは『青薔薇連合会』唯一の女性幹部。

うら若い乙女ではあるが、誰より肝は据わっている。

そんな彼女が、恥も外聞もなく涙を流して泣きじゃくっているのだから、ただ事ではない。

シュノさんの傍に寄り添っている俺を見て、アリューシャが声をあげた。

「おめぇかルレ公!とうとうやりやがったな!女を泣かせるのはルレ公の日常ではあるけども!シュー公を泣かしやがった!いーけないんだ!アイ公に言いつけてやるからな!」

「アリューシャ、お前は小学生か」

すかさずルルシーが突っ込みを入れた。

と言うか、言いつけるも何も、今そこにアイズ、いるから。

「ようしシュー公!アリューシャが仇を討ってやるからな!ルレ公!そこに立ってろ!アリューシャが五キロ先から股間を撃ち抜いてやる!」

「ちょ、やめてくださいよ!」

俺の、俺の商売道具が。

アリューシャの狙撃の技術は本物だ。彼に狙われたら、一生安心して街を歩くことは出来まい。

すると、そんな俺のピンチを、アイズレンシアが救ってくれた。

「ちょっと落ち着きなよ、アリューシャ。ルレイアがシュノを泣かせるはずないでしょ。他の女性ならいざ知らず」

アイズ。助けてくれるのは嬉しいけど。

俺はシュノさんのみならず、女性を泣かせたことはないぞ?多分。

ベッドで啼かせたことなら無限にあるけども。

そして、シュノさんも。

「ち、違うの。ルレイアが悪いんじゃないの…」

泣きじゃくりながらも、俺の無実を証明してくれた。

「ルレ公じゃない…?じゃあ、何だ?」

「…この子…」

「この子?って、なん…」

シュノさんの視線の先を、ぐいっと身を乗り出して覗き込もうとしたアリューシャを。

先に気づいてハッとしたアイズが、そんなアリューシャを制止した。

「…!」

アイズに制止されて、一瞬怪訝な顔をしたアリューシャだが。

シュノさんが抱いているのが何なのか気づいたらしく、さすがのアリューシャも言葉を失っていた。

ルルシーも、明らかにショックを受けた顔をしていたし。

ルリシヤは、表情を固くして、じっとそれを見つめていた。

そう。それ。

シュノさんが抱いているのは…一言で言えば、死体、だった。

命をなくしてしまった、小さな身体。

「…ルーちゃん…」

シュノさんは、悲しげにその名前を呼んだ。
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