The previous night of the world revolution4~I.D.~
これ以上、話すことなんてない。

ルシードを部屋から追い出し、俺達は三人で顔を見合わせた。

あまり、良い気分ではない。

とにかく騙されていることと、洗脳されていることは分かったが。

その目的も、首謀者も何も分からず。

ただただ、シェルドニア王国に着くまで、待つことしか出来ない。

抵抗する手段さえないのだから、状況としては絶望的だな。

とにかく、シェルドニア王国がここまで首を突っ込んできているということは。

オルタンスは、関係ないんだろうな。

おおかた、あのルシードがオルタンスの名前を騙って、さも帝国騎士団から送られてきたように偽装したのだろう。

全く腹立たしいことだ。

「…何とか対策を考えられれば良いんだが、対策の立てようもないな」

と、溜め息をつくルリシヤ。

「えぇ。俺達はこうして、顔を見合せて唸ってることしか出来ませんからね」

船から降りられない以上、詰みだ。

何も出来ることなんてない。

せめて、洗脳されないよう気をしっかり保っていることしか出来ない。

あとは、『白亜の塔』や、洗脳ソングの流れている船内のアクティビティルームからは遠く離れて。

客室に閉じ籠っていることくらいか。

客室のスピーカーはぶち壊しておくことにしよう。

「シェルドニア王国が、俺達に何の用だろうな…」

「さぁ…」

ルティス帝国は、そもそもあまりシェルドニア王国とは交易が盛んではない。

隣国のアシスファルト帝国のように、親密な関係を築いている訳ではない。

だから、シェルドニア王国がどんな国であるかは…教科書の知識でしか知らないのだが。

「確か、ヘールシュミット家とかいう王家が、代々国を納めてきたんですよね」

「あぁ」

ルティス帝国で言えば、ベルガモット王家だな。

「今の王様は誰だったか…。確か、もっさりしたおっさんだったような…」

「いや、ルレイア先輩。そのもっさりしたおっさんは、多分先代だ」

「先代?」

「あぁ。俺の記憶が正しければ、数年前王が急死して、今は別の…もっと若い王様が王位についているんじゃなかったか」

へぇ、そうなの。

全然知らなかったよ。

「ルリシヤは物知りですねー。俺、ルルシーにしか興味がないもんだから…」

「…お前は、まだよく知ってる方だろ。俺なんか、シェルドニア語すら知らない」

ルルシーが、苦々しくそう言った。

「無理もないですよ。ルティス帝国にいたら、シェルドニア王国の内情なんて、知る機会もほとんどないでしょう」

シェルドニア語を知ってる、俺とルリシヤが異端なのだ。

普通のルティス人は、シェルドニア王国のことなんて知らないよ。

「そりゃそうだが…。こんなことになるなら、もう少し調べておくんだった」

「それは俺も思ってますよ。まぁ、後の祭りですけどねー」

こんなことになるなんて、思わないじゃないか。

後悔するより、今は先のことを考えよう。
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