初恋成就は虹色雲のキセキ ~白馬の騎士は鳥かごの中の小鳥を溺愛する~

今は8時半か…
バーはもう開いてる時間の様だし、行ってみようかな。


「それでは私はこれで…。本当に楽しい時間をありがとうございました」

「ううん、私こそ!いつも一人でゴハンしてたから、お話しできてすっごい楽しかった!久しぶりに横浜のディープなお話もできて嬉しかったし!ありがとう、京都を楽しんでってね!」

「はい、ありがとうございます」

お世話になったマナさんに再びお礼を言ってお店を出ると、湿気を帯びた空気が肌にじっとりと纏わりついた。


「えっと、今がここだから…」

メモを見ながら目的のバーに向かって歩いていると、ポツ…ポツ…と雨が当たり始めた。

あれ、雨?
予報にはなかったのに…

傘なんて持ってないし、酷くならないうちにと小走りで向かう。


…あそこかな?
少し先に〔iridescent clouds〕と書かれた看板が見えた。


「ハァ、ハァ……ふぅ…」

お店のドアの手前で立ち止まり、少し上がった息を整える。


あれ?
雨が止んでる…通り雨だったのかしら。


初めて入る旅先のバーにちょっとだけ緊張しつつお店のドアのハンドルに手をかけると、その瞬間、まだ押してもいないのに勢いよくドアが開いた。

「わわっ!?」

私はハンドルを掴んだままつんのめり、頭がゴッ!と何かに当たったと同時に、左肩を力強く掴まれた。

……?

…あっ、人にぶつかったんだ!

一瞬の出来事で思考が止まっていたが、漸くそう気付くと咄嗟に体を引いて「すみません!」と謝った。

そぉっと顔を上げると、そこには整った顔立ちの、眼鏡をかけた背の高い男性がいた。


わ、カッコいい人…


目が合うと、その人はふっと笑い「お客さんでしたか、どうぞ」とそのままお店の中に入れてくれた。


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