遣らずの雨 上
灰白色

崩壊

連休最終日私は数年ぶりに体調を崩し
風邪でもないのに高熱が出てしまい、
せっかくのGWだったのにも関わらず、
殆ど寝込んでしまった。


「おはようございます‥。」


『おはよ‥‥って‥どうした?
 顔色悪いよ?』


「ハハ‥‥ちょっと寝不足で‥」


苦笑いを佐藤さんに向けるものの、
万全の体調には戻せず出勤日を
迎えてしまったのだ。


薬は飲んできたから大丈夫だし、
あと2日頑張ればまた休める‥‥


気持ち悪さからか、食欲もなく
どうしたって元気が出ないけれど、
周りに心配かけてはいけないし、
なるべく普通に過ごさないと‥


『佐藤さん、新名さんおはよう。』


ドクン


出社してこんなにもすぐに聞く事に
なるとは思わなかった主任の声に
心臓が震え、体がビクッと反応する



『おはようございます』
「おはようございます」


俯き加減で佐藤さんと挨拶をしてから
頭を下げると、視線を感じたので
いつも通り視線を上げて目を合わせた


『‥‥‥佐藤さん悪いが、HPの
 口コミやツイートが来ていないか
 チェックしておいて貰えますか?
 ‥新名さんは少しいいかな?』


えっ?



目線だけで部署の外へと歩いて行く
主任に、まるで床に接着剤で張り付いた
かのような足が動いてくれない


それどころか、その場で立っているだけ
なのに視界がぐるりと歪み始め、吐き気
と共に意識が朦朧とし始める


どうしよう‥‥‥気持ち‥悪っ‥‥


『おい!新名‥‥』


倒れる寸前に聞こえた酒向さんの
少し低めの声と、周りから沸く様々な
話し声にうっすらと目を開けるものの、
鼻に届いた香りに何故かホッとして
そのまま意識を失った



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ピッ‥‥ピッ‥‥ピッ‥‥


規則正しく聞こえる機械音が耳に届き、
自分が眠っているのだと意識が戻る頃、懐かしい香りにここが家ではないのだと目を開けなくても分かってしまった


私‥‥出社して‥‥
それからどうなったんだろう‥‥‥



コンコン


えっ?


ドアが開く音が耳に届いた後、足音が
近付き誰かの気配を感じると、左手に
感じられた温かな温度にようやく瞳が
ゆっくりと開かれていく


『‥‥‥起きたか?』


ドクン
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