寒がりなわたしの彼はすぐにわたしを抱きしめたがるから
そっと緋太さんが手を伸ばした。

でも避けるように逃げちゃった。

「あ…っ」


また、やっちゃった…!


でも今のは違くて、そうじゃなくてっ 

あの…っ


「わたしだけ…っ、緋太さんにあっためてもらうのはずるくないですか?」

暖や佐湯くんみたいにわたしのものじゃない、緋太さんはここにいる。

学校のもの、だからそれはみんなのもの。

わたしだけ頼るのはよくないと思うの。

「いつも、丁寧に掃除してくださるのは柑乃さんです」

ふっと声を漏らすように微笑んだ。

その表情はやわらかくて、緋太さんのタレ目がもっとたれていくみたいに。

「来るたびに掃除してくれて綺麗にしてくれるのは柑乃さんだけです」

「それは…」

いつも使ってるから、てゆーかわたしばっかり使ってるんじゃないかなってちゃんとキレイにしておかなきゃって…

「僕がいつも綺麗でいられるのは柑乃さんのおかげですから」

じゃあ緋太さんのことを知ってるのはわたしだけなのかな?

こうして現れた緋太さんのことを知ってるのは…

「いつも掃除してくれてありがとうございます」

にこっと笑って、その表情に心がポッとなる。

「だからこうして柑乃さんのお話出来て僕は嬉しいんですよ」
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