色恋沙汰はどこまでも
 「邪魔」

 女の声が聞こえて振り向くと、さっきすれ違った中坊が白杖を持った男を庇うように立っていた。

 「うお、可愛い子じゃーん。邪魔だよなぁ?この変な棒持ってるやつ~」

 「ほんと邪魔だよなぁ!目ぇ見えねーなら大人しく家でシコってろっつーの」

 「は?私はあんたらに邪魔って言ってんだけど」

 「「あ?」」

 「邪魔」 

 「オメェ女だからって調子のんじゃねーぞ?」

 おいマジかお前ら、普通女に手ぇ出すかぁ!?しかも相手中坊だぞ、クソすぎんだろ。胸ぐらを掴まれてる中坊を見てビニール袋に入ってた数本の酒を思わず手離し、慌てて駆け寄ろうとした時だった。

 えー、マジかー。あれよこれよという間に伸された野郎共。

 「あの、驚かせてごめんなさい」

 平然と男を伸した後、白杖を持った男に謝った中坊を見て唖然とする俺。

 「すみません!本当にすみません!」

 「あなたが謝る必要はないと思うけど。だって邪魔だったのこいつらだし。この点字大切なんでしょ?それ塞いでたこいつらが悪いんだから別に気にしなくてよくない?で、どこまで行くんですか」

 「え?あ、あの、駅まで」

 「あー、私もそっち方面。一緒に行きません?」

 「いっ、いいんですか?」

 「だって方向一緒だし。手、触ってもいいですか?」

 「え!?あ、はい!」

 「はい、ここ肩ね」

 男の手を優しく取って、なんの迷いもなくそのまま自身の肩に置いてる中坊を見て妙に胸がザワついた。躊躇することなく自分より遥かにデカい男にも立ち向かって、最後の最後まで人助けするとか、なんなんだこの中坊。俺はこの結末を知りたくなって後を付けた、断じてストーカーではない。
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