(二)この世界ごと愛したい
ようやくカイの酒場に帰ってくる頃には、私はもう生気も抜けてぐったり状態。
途中から空を仰いで雲を眺めてしまうほど。
「分かってんのか!?」
「分かったー。分かったからもうやめてー。」
何の拷問なんだこれは。
「二人ともお疲れさん。」
「「……。」」
「…お嬢のお客さん。頼むから早くどうにかしてくれ。」
疲れて帰って来て。
お店のドアを開けた先にいる人物を見て、私とおーちゃんは見事に固まった。
そして、それが私の客だと言う。
「遅いわ!このクソ女あ!!!」
また来たのか、イヴさん。
「…私予定あるから、ごめんね。」
「何が予定だあ!?ふざけるのも大概にしろ!?」
「お礼だね。国境守備手伝ってくれてどうもありがとう。」
「貴様の礼などどうでも良い!ハルさんの服はいつ届くんだ!?」
あー。
言ったなー。そんなこと。
「…忘れてた。」
「今すぐ地獄に送ってやる。」
どうしようかな。予定は本当にあるんだよな。
今めちゃくちゃ疲れてるし。長時間のお説教のような話聞かされて頭痛いし。
…逃げよう。
「おーちゃん。」
「何や。」
「ここ任せた。」
「…は?」
すぐに私は再び外へ飛び出して。
パルテノンの皆さんには悪いと思いつつも、火龍の炎で舞い上がる。
普段はこの王都から直接飛んだりしないんだけども。もうね、今だけは許してください。あの場所にはめんどくさいしかなかった。