(二)この世界ごと愛したい
そんな熱いユイ姫さんとは打って変わり。
涼しい顔で城へ来ていたシオンは、今日はエゼルタ王からのお呼び出しだったらしい。
「…失礼します。」
「シオン、シキの様子はどうだ。」
「弟子達と隠れて鷹狩りに出掛けたり、女連れ込んだり、自由にしてますよ。」
「あの馬鹿は…全く。」
謹慎中にも関わらず、自由奔放な総司令さん。
「また勝手に兵を起こしてなんて馬鹿なことはしないはずなので、心配要りません。」
「シキはあの姫に執着を見せる。そこがどうも…不安でな。」
「…陛下もですか?」
「…シキが話したのか?」
お互いの腹の内を、探ろうとする両者。
私に執着するのはエゼルタ王も同じではないのかと、シオンは仕掛けた。
「いえ、特には。」
「…あの姫と、接点があるらしいな?」
「……。」
「これはシキに聞いた。お前がようやく惚れる女が出来たのかと思ったが、それはトキの方だと言っていた。」
前者が正しいのだが、ここは黙るシオン。
「お前から見て、どう思う。」
「…アレンデールの姫を、ですか?」
「ああ。」
私をどう思うか。
これまたシオンには難しい問い掛けで、珍しく即答出来ずに考える。
「…殺すには惜しいか?」
「……。」
「お前にはどう見えた。」
「…分かりません。」
考えて、考えた結果。
答えは分からない。それは本心でもあった。
本心を垣間見せながらも、もっと心の奥底から溢れる想いがシオンから紡がれる。
「ただ、俺には殺せません。」
「…そうか。」
小さく返事をしたエゼルタ王は、貫禄ある顔で優しく笑い目を細める。
「それはお前の意志か、トキのためか。」
「……。」
「ユイが荒れそうな話だな。」
「…ですね。」