(二)この世界ごと愛したい




時間はどんどん過ぎて行き、外はもう日も沈み月が昇る。


私の膝にはアキトが陣取ってるので身動きも取れず、部屋に灯りを付けることも出来ない。




そんな中、この部屋のドアがそっと開く。





「…リン?」




ひょこっと顔を出したのはお仕事を終えたトキ。



私はトキに人差し指を口元で立てて静かにするように伝えると、トキは音も立てずにこちらへ近寄る。





「…幸せそうに寝ちゃって。」


「そうだね。すごく疲れてそうだったから、ちゃんと寝てくれて良かったよー。」




囁くほどの小さな声で。


私とトキはアキトを起こさないように話す。




「この状態で寝れるアキトって大物だね。」


「アキトじゃなくて私がすごいんだよ。」


「…そうかもね。」




そう言って二人で笑い合っていると、下から私に手が伸びてくる。



アキトさんのお目覚めです。




アキトの手は下ろしたままの私の顔に添えられて、薄っすら開いた目が私を捉える。





「おはよ?良い夢だったでしょ?」


「……。」


「アキト?」




まだまだ寝惚けているようで。


声を掛けても、私の顔に添えた手も私を見つめる視線も離れてはくれない。




…トキいるんだけど。





「まただ。」


「またって何が?」


「月。」


「はい?月?」




短絡的な言葉しか出てこないアキト。








「お前は月に帰んのか?」


「…は?」




月に帰る…とは?


かぐや姫でもあるまいし?





「アキトー。夢と現実が分からないなら俺が分からせてあげようか?」


「…あ?トキ…ん?」




トキの声はちゃんと届くようで、ようやくしっかり目を開いたアキト。


そして真上にいる私を見て一言。

 




「…本物か?」




一体どんな夢を見ていたんでしょう。





「月には行けないから偽物かもね?」


「…偽物か。」


「目が覚めたならアキト起きてー。私そろそろ身体痛いー。」





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