(二)この世界ごと愛したい
お酒の席で失恋させてしまったはず。
気持ちには応えられないと丁重には言えなかったけど、私はお断りしたはず。
…なのに。
「アキト…?」
「あ?」
「その…大丈夫?」
「…大丈夫じゃなかったらお前の答えは変わんのか?」
変わらない…と思う。
でもるうに教えてもらった。
距離感というか、線引きは大事だと思うので私は腕の中から脱出を試みる。
「何で逃げんだよ。」
「全然逃げれてない…し、お酒飲んだから力もまだ入んなかった。」
「…元々部の悪い戦でな。勝ち筋は見えねえのに、それを諦めるのは俺じゃねえとも思う。」
力なくアキトの腕の中にいる私。
「トキには諦めろって言われた。それが俺とお前のためだって。」
「……。」
「でも違えよなあ?」
「え?」
私を抱き締めていた腕を緩めて、向かい合う形になった。
「お前が好きで俺が憧れる鬼人は、来世まで諦めないことを選んだ男だ。」
「っ…。」
「なら俺は再来世まで諦めねえ。」
そう言って私の首の後ろに手を回す。
首に少し重みを感じたので目を向ける。
そこには、アキトが腰に付けていた椿の将印。
「っあ、アキト!?」
「やる。」
「受け取れない…!!」
家族であるハルとはわけが違う。
もうその意味も知ってしまった以上、貰うわけにはいかない。
「最悪トキがヤバくなった時にって、置いとこうと思ったが。トキのことはお前がどうにかするんだろ?」
「それはそのつもりだけど!使わないままでもアキトが持ってなきゃっ…!」
「いらねえよ。」