(二)この世界ごと愛したい
ぼちぼちエゼルタの国境を越えた頃だろう。
ここで私の炎はほとんど空っぽになってるのが自分で分かった。
「…っ。」
「無理させてすみません。」
「…想定内だから大丈夫だよ。出来るだけ粘ったのは、限界の幅を広げたかったから。」
ただもう自身の炎で飛ぶのは無理そう。
私は目を閉じて、内に住む火龍さんを呼び起こす。
「…炎補填するねー。」
「…その瞳、消耗するって言ってませんでした?」
紅の瞳。
シオンは見るの二回目ですよね。連合軍の時じっくり近くで観察されたのを思い出した。
「まあ、戦ってるわけじゃないからそこまで消耗しないよ。」
「…やっぱその瞳も気になる。」
「色変わりの瞳なんて珍しいもんねー。」
「この状況は便利ですね。前回と違ってじっくり観察出来るんで。」
シオンがそんな不思議なことを言うので、思わず私もシオンを見る。
端正な顔のシオンと、自然に目が合う。
「観察って私を?」
「はい。」
「…シオンの興味を惹けるほど、特に何も出来る気がしないんだけど。」
「そのままで充分です。」
そうですか。
シオンの瞳は、一見茶色っぽい一般的には少し色素薄めな感じに見えるけど。
この距離でよく見たら、琥珀色っぽいかも。
「…シオンはやっぱ、狼っぽいね。」
「お陰で変な異名まで付けられて俺は迷惑してます。」
「異名って?」
ハルも世間では鬼人と呼ばれてる。
シオンにもまさか異名があったなんて。私は本当に世間のことをまだ知らなくて情けない。
「…さあ?」
「えー教えてよー。」
「アキトもありますよ。」
「そうなの?」
あるのが普通なのか。
ん?そうなると私は?異名あるのかな?