(二)この世界ごと愛したい
「青春やなー。」
「か、カイ!?どこが青春や!?」
「分かる分かる。お嬢の笑顔が可愛かった上に嬉しいこと言われて照れたんやろ。」
「てっ…照れてへんわ!!!」
そう言い返すがまだ真っ赤な顔で、もう説得力は皆無。
「私、恋愛願望ないんだよね。」
「…は?」
「だからおーちゃんごめんね。」
「俺お嬢タイプとちゃうで!?惚れてもないで!?なんで俺がフラれたみたいになってんねん!?」
もうここ最近モテ期すぎて。
先に手当たり次第布石を打たねばと私は色々学習しているんです。
「これが私の経験値。」
「い…意味が分からん。」
「カイご飯おいしかったよー。ありがとう。」
「また無視か。」
ニコニコと微笑ましくおーちゃんを見ているカイにご馳走様と伝えて。
私はこれからどうしようか考える。
「ニャー。」
「ミケさん、私とお散歩する?」
餌を食べ終えたミケさんが、同じく食事を終えた私の膝に飛び乗った。
「ニャ…。」
「眠いのかー。私せっかくだから王都観光したかったけど、ミケさんは休んでる?」
「…ニャー。」
「えー?私もここにいるの?」
「ニャー。」
「…どうしよっかなー。」
どうやらミケさん。
昨日同様、私とダラダラ過ごすのが希望らしい。
「お…お嬢ミケの言葉が分かるん!?」
私とミケさんを見て目をまん丸にしてるおーちゃん。
「何となくだけどね。」
「すげえ!ついでにもう脱走せんように言うてくれ!」
「それはさっき伝えたけど不服そうだった。」
「何が不服やねん!?」
私も全部が全部分かるわけじゃない。
猫はそもそも気分屋だし、脱走するのにちゃんとした理由なんかないのかもしれない。
「…実は不満なんかないんだよね。」
「は?」
「ただ、我が儘を言いたいだけ。構ってほしいだけ。一人になりたいのに独りにしてほしくないだけ。」
「…ミケが言うたん?」
言ってはない…けど。
「…私と同じな気がしただけ。」
脱走経験豊富な私なので。
ミケさんもそうじゃないかなって。