(二)この世界ごと愛したい
「うん、じゃあ離れましょう。」
「それは嫌や。」
「…うん?」
おーちゃんが少しだけ身体離す。
でもその腕は私の腰に回されたまま、向かい合ってしまった。
「もうちょっと一緒におりたい。」
ズキュンと。
高威力な矢に打たれたように。
可愛さ満点の顔と台詞に、私は思わず顔から火が出るように熱くなる。
「〜っ、ず…ずるいっ!」
「…手。」
そのまま私の手を取って握ってみたり。
な、何この子!!!
あざとい!あざとすぎる!!!
「お、おーちゃん?」
「…風船、残りどないするん?」
「へ…あ、どうしようかな。もう割れないしこのまま飾っておこうかなー。見てるだけで嬉しいし。」
「研究は終わったんか?」
終わったというか。
もうこれ以上どうしようもないんです。
「う、うん。」
「勿体なくて割られへんって?」
「…カイめ。」
言わないでって言ったのに。
「姫やのにこんなんで喜ぶんか。」
「え?」
「嬉しそうやったやん。」
「…言ったでしょ。私は何も知らない姫だったって。姫の立場を捨てて外に出て、ようやく知れることが山のようにある。」
情けないと思う。
愚かだと思う。
「知らないことは、罪だと思うの。」
知らない、分からない。
そんなことで人を傷付けることだってあるかもしれない。
「きっと望まれてないし、納得もされてない。それでもいつか、私がもっと頑張って強くなって、色んなことを学んで知識を得られれば…。」
もっと役に立てるかもしれない。
「そしたら…。」
「そしたら?」
ハルは私を、認めてくれたりするだろうか。
「…ま、そうなりたいって話だよ。」
おーちゃんは不思議そうにしている。
まだ私の手を握ったまま。もう片方の腕は腰に回されたまま。