(二)この世界ごと愛したい

蓄積される疲労





この街に着いてから四日目の朝。


私はおーちゃんと、再びよーちゃんの店を訪れた。




「ハニー!」


「喧しいわ。剣引き取りに来た。」


「勿論美少女お嬢さんの剣も仕上がったで!お嬢さん待たせてごめんやで!」



差し出された剣を受け取る。


その違いにまず驚く。




「軽いっ!」


「こんな上物の剣扱うんハニーの時以来で緊張したわー。」


「よーちゃんありがとうっ!」


「ぬぅっ…。胸が苦しい!あかん!鬼人の大切な人に…!俺と言う奴は!!」



ガンガンと壁に頭を打ち付け始めたよーちゃん。


お元気そうで何よりです。




「あの、お支払い…すみません。」


「あ、もうカイに貰ったで。気に掛けてくれておおきに。これでまたディオンの遊郭行ける…あ。」



遊郭…。


なるほど、遊女さんたちと遊ぶためにお金が欲しかったのか。理解しました。




「安心してハニー!俺のハニーは一生お前だけやで!」


「気色悪いこと抜かすな!寧ろ早く身固めろ!ええ歳やねんから!」


「ええ歳で言うたらお前も…あ。」


「シバくで。」



私とおーちゃんに目を向けて、罰が悪そうな顔をしたよーちゃん。


すぐおーちゃんに怒られていたが。そんな姿を見て私は苦く笑うことしか出来ない。




「あ、ハニーそう言えばカイから連絡来てたん忘れとった。裏に置いてるわ。」


「はよ言えや。」



お店の奥にカイからのお手紙を見に行ったおーちゃん。


なので、私は不思議な技術で軽くなった剣をマジマジと見つめている。




「なあ、お嬢さん?」


「んー?」


「ハニーのこと頼まれへんやろか?」


「…さっきの身を固めるって話?」



コクリと頷いたよーちゃん。




「鬼人との未来がないんやったら、どうにか贔屓目にお願い出来ひんやろか。」


「…それがおーちゃんの幸せとは限らないよ。ヒマリさんのことも何となく話は聞いたけど、同じ道を辿る可能性がある私じゃない方がって思わんでもないし。」


「お嬢さんなりに考えてくれてるんやね。」


「そりゃあ…おーちゃん良い人だし…。」




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