(二)この世界ごと愛したい
「謝ったよね!?」
「わざとかもしれねえじゃねえか。」
「わ、わざとじゃない!!!」
「どうだかなあ?」
いつものニヒルな笑みを浮かべている。
意地悪すぎない!?
「大体アキトは日常茶飯事してるくせに。私にいちいち突っ掛からなくていいじゃん。」
「日常茶飯事?」
「彼女が何人いるかは知らないけど、私をその不特定多数の人と一緒にしないでください。」
私が転がっている寝台に、アキトが近付く。
…久々に私の警報が鳴る。
この雰囲気はまずい。これまでの経験からして逃げねば捕まる。
私は素早く起き上がる。
この部屋から一旦出ようと考え、どうせなら本は持って行こうと側に置いた本に手を伸ばした。
「逃げんのかあ?」
相も変わらず、ニヒルな顔で。
その手が、本に伸ばした私の手を掴んだ。
「他の女と、お前を一緒にすんなって?」
「…それが変?」
「いや?お前に言われるまでもねえけど?」
「じゃあ別に私にちょっかい出さなくても、アキトは間に合ってる…んっ…!」
今度はアキトから。
重ねられた唇。
すぐに唇を離したアキトは、続けて私に難問を投げかける。
「一緒に出来ない理由が、分かるか?」
「っ…ちょっとまず離れて!」
唇が離れたとは言ってもまだ至近距離にあるアキトの顔。
私は火照る顔を隠すために俯く。
「こっち向いて、その出来の良い頭で考えてみろ。」
「っ!!!」
私の顎に手を添えて、無理矢理に顔を上げさせられる。
「今のその顔、椿の花びらみてえ。」
もう、穴があったら入りたい…。