(二)この世界ごと愛したい




「…よし、本読もう。」


「お前考えるの放棄したな。」


「……。」


「…無視か。」




だってだって!!!



もし私の予想が正しかったら。


どうするの。




前にアキトと恋愛を戦に見立てて話をしたことがあった。



『要は勝ち目が出てから伝えりゃいいってことか。』




そう、言っていた気がする。


現状で私に恋愛願望はないので、勝ち目があるとはとても言えない。




…だから大丈夫だ。




アキトはきっと私に気持ちを伝えることはしない。見て見ぬフリは可哀想なことかもしれないけど確証もない。




それに、伝えられても。




私はきっと、応えてあげられない。






「…読まねえのかあ?」


「読ませてくれなかったんでしょ。」




白々しいアキト。


もういつのまにか私を掴んでいた手は離れていて。アキトは私の横にゴロンと転がっている。




「もう邪魔しねえよ。」


「…どうも。」




私もその横で、再び本を開いた。



数冊ひたすら読み続けたものの、睡眠不足の身体を睡魔が襲う。





読みたい、眠い。読みたい、眠い。



しばらく拮抗したこの勝負を制したのは睡魔。




私は気が付けばそのままうつ伏せで眠ってしまい。



それをただ眺めていたアキトが薄く笑う。






「餓鬼かよ。」




私に布団を掛けて、開いたままの本を閉じ。



そして優しく抱き締める。







「無駄に気付かせて悪いことしたなあ。」




私がアキトの気持ちに勘付いたことさえ、読み取ってしまう。


ハルも顔負けなほど、私の…と言うか人の気持ちに敏感なアキトは、悪くもないのに悪いと思ってしまっていて。



その罪悪感を抱えながらも、私を離せない。





…どう考えても、馬鹿なのはアキトの方だ。





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