(二)この世界ごと愛したい
それにしても、まさかおーちゃんにプロポーズされる日が来るとは思わなかった。
ここでは結婚願望ないって声を大にして言い続けていたのに。
未だカイに吠え続けているおーちゃんに目を向ける。
「…おーちゃん。」
「ん?また断り文句か?」
視線だけこちらに向けて、嫌そうな顔で私を見ている。
嫌そうにされているが伝えねば。
「…嬉しかった、から。」
「……。」
「…ありがと。」
「……え、もう襲ってええの。」
血迷ったおーちゃんの頭をスパンッとカイが叩いた。
「あかんに決まっとるやろ。盛んなアホ。」
「これに抗えって無理ない?」
「…三人でやる?」
「……。」
「冗談や。マジのドン引きすな。」
「…冗談の温度やなかったからキショイ。」
仲良く二人が話してるの和むなー。
でも自分が不利になるのを恐れたカイが、話題を変える。
「例の箝口令何やったん?」
「…伝説の男が出陣決めたらしい。」
「伝説の…って、は?」
「エゼルタ現総司令。お嬢を本気で取りに来るって。」
自分で聞いておいて、開いた口が塞がらないカイ。
その様子から凄いことが起こっているんだろうが、私にはそれがどれだけ凄いことなのかが分からない。
「あかんあかん。お嬢今からでもアレンデール戻さな。」
「え、私帰らないよ?」
「あかん。絶対あかん。相手が悪過ぎるわ。」
「…ここに居たら、ご迷惑になる?」
それならばここを離れるのは仕方ないが、アレンデールには帰らない。
「それはないけど、あの人は相手にしたらあかんねんて。」
「迷惑じゃないならよかったー。」
「お嬢ちゃんと聞き。エゼルタの総司令言うたら、戦負けなしの大物や。全盛期はお嬢のおとんでさえ勝ったことない。」
「…え?」
パパが…勝ったこと、ない?
「やから分かるやろ。とりあえずアレンデールなら鬼人が死んでも守ってくれるし、ほとぼり冷めるまで大人しくしとき。」
「…うん、やだ。」
「やだて言うてる場合ちゃう。」
「ハルが私を守らなくて済むように国を出たのに。そんな理由で戻れないよ。」
私の中で、パパはハルと同じくらい強くて。
ハルに加えてちゃんと軍略を考えられる人だから、もう隙なく尊敬に値する人。親バカなのがたまに傷だったくらい。