「逢いたい」でいっぱいになったなら~私の片想いが終わるとき

再々会は最寄り駅で

2週間後の金曜日の夜。

明日が休みだっていうのに、就業後になんの予定もない。


健から食事のお誘いは受けた。
「花とごはんに行くから一緒に行かないか?」って。
「花が久しぶりに美琴にも会いたいって」
と言われたが、健と花ちゃんのデートに行くなんてできない。

忘れかけていた胸の痛みにまだ健が好きだと気付かされる。

お酒でも飲んで帰ろうかなあ・・・なんてことを思いつつ改札を通る。

すると目の前に背の高い男性がいた。

「あ。コウさんだ」

反射的につい呟いてしまったのだが、その声がコウさんに届いていたようで、コウさんが振り返った。
すぐに私を見つけ、にっこりと笑って軽く手を上げる。

「美琴ちゃん!驚いた!家近くなの?」
と歩み寄ってきた。
そういえばコウさんはものすごく家が近いことを知らないんだった。

「こんなところで会うなんて驚いたね」
「本当にびっくりですよね」
話しながら二人で並んで歩き始める。

「あ!」
「?」
いいことを思いついた!

そう思うとコウさんを見上げた。
コウさんも「?」という顔で見下ろしている。

「ね、コウさんは明日はお休みですか?」
と言って営業用の微笑みを浮かべる。

「うん。土日は基本休みだよ」
「やった!じゃ、ちょっと一杯行きません?」
微笑みを通り越して、にやりと笑ったという方が正しいような笑みを浮かべた。

コウさんはははっと笑って
「なんでそんな悪そうな顔してるの?」
「えー?そんな悪かったかな?」

「うん。悪代官みたいな顔」
「ひどいっ!どっちかと言えばかわいい町娘でしょ」

「うん。確かにかわいいけど、美琴ちゃんは自分でかわいいとか言っちゃうタイプなんだ」
「えーーー!ちょっと待って!本気にしないで!
そこは『はいはい、かわいいかわいい』と雑な扱いをされてって流れが主です」

「そうなの?」
「そうですよ、でなきゃ自分をかわいいと思っちゃってるイタイ子みたいじゃないですか」

「イタい子なとかと、、、」
「ひどっ!!」
などと、わちゃわちゃと話していると、

「とりあえずここでいい?」
とコウさんは一軒のお店を親指でさした。
どうやら話しているうちに到着したらしい。

駅のいつもの降りる側とは反対側に来ていた。
指す店先には、ブラックボードに【TESORO】と書かれている、イタリアンバルだった。


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