「逢いたい」でいっぱいになったなら~私の片想いが終わるとき
飲み会が終わるといつものように健に送ってもらう。

フットサルをする時はいつも、荷物があるからと健は車で来る。
家が通り道でもないのに、大学の後輩でもある私はいつも車で送ってもらう。


今回はコウさんも一緒だった。
コウさんの住むマンションは私のアパートの近くなんだそうだ。
私が助手席に乗り、後部座席にコウさんが乗る。

3人で話す話題は楽しくて、アッという間にコウさんのマンションに到着した。

「今日はありがとうございました。
楽しかったです」
「こちらこそ、ありがとうございました。
また、ご一緒しましょう!」
「ぜひ、お願いします。
美琴ちゃんもまたご一緒しましょう」
「はい!よろしくお願いします」

コウさんとマンションの前で少しだけご挨拶をして別れた。



私達はコウさんのマンションを後にして、近くのコンビニに寄った。

「ねえ健。私、コウさんと一緒に降りなくてよかったの?」
「なんで?」

「だってコウさん家経由でうちに行くと迂回しなくちゃいけないから遠回りになっちゃうよ。
車だと5分以上かかるけど、コウさんのマンションの前で降りて近道の階段を登れば、歩いて3分でうちに着いたと思うから」
「そうだけど、美琴は降りなくていいんだよ。
あそこで美琴を降ろすとコウさんが美琴を送っていくことになるだろ?」

「ならないよ。子供じゃないんだもん、一人で帰れるよ」
「なるよ、絶対。こんな夜に女の子一人で帰すわけないだろ。それに子供じゃないから危ないんだよ」

「そーゆーもの?」
「そーゆーものです。
コウさんはいい人だけど、さすがにこんな時間に美琴と二人きりとか、お父さんは許しません」

飲み物を選びながら、健は横目に私を見た。
「お父さんって…健は過保護だなぁ」
ぶつぶつ言っていると、健が頭をポンと小突いた。
「美琴は油断しすぎ。もう少し自覚を持ちなさい」
「はーい」

健は困ったように笑いながら小首をかしげた。
「ちゃんとわかってんのかなあ」
「わかってるよ。
人に迷惑かけちゃダメって事でしょ?」

「違う。全ッッッく違う。はあぁぁぁ」
溜息をついた健は背後から耳元に顔を近づけてきて、

「美琴は自分がかわいいって自覚してください」
と小声で言った。

びっくりして耳元に手をやり、がばっと健に振り返る。

私の顔は真っ赤になっているに違いない。
ものすごく顔が熱い!!
恨めしそうに健を見つめたが、まったく気にしていない様子の健に少し悲しくなる。

「ここ、邪魔になってるよ」

健は私の腰を手で寄せ、私の目前にある水が欲しそうに隣に立っている男性から距離を取らせた。

健には故意はないと分かってはいたけれど、健の息がかかった耳元や、触れている腰が熱くなるのを感じて、顔が赤くなるのを止めることができなかった。

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