苦くも柔い恋



「和奏お前、怒るとガキの頃みてえになるのな」

「…なにそれ、馬鹿にしてるの?」

「いや、少し安心した」


千晃は顔を上に上げ、宙を仰いだ。


「もう二度と、顔すら見れないと思ってたからな」


どこか切なそうな物言いをする千晃に言葉が出てこなかった。

千晃の気持ちを初めて知って、その台詞の意味が今ならわかる。

けれどだからって、今までの事が全部無しになる訳がなかった。


「どうなりたいかなんて決まってる。やり直したい、全部」

「…やり直す?」

「和奏がやりたかった事、俺がやりたかった事…全部だ」

「……」

「全部やって、和奏にちゃんと彼氏って思われてえ」


そう言った千晃と目が合い、妙に恥ずかしくなってつい目を伏せてしまった。

膝の上でスカートの裾を強く握り、ドキドキと煩く鳴る心臓におさまれと何度も訴える。


するとふと千晃が立ち上がり、隣に腰掛けてきた。

思わず距離を取ろうとしたけれど、腕を掴まれそれが叶わなくなってしまった。


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