苦くも柔い恋


そう。好きじゃない。

そのはずなのに、千晃と離れたいと思うのに、好きだと言われて喜んでしまう自分がいてショックだった。

だってそうじゃないか。

そうじゃなければ何の為にあれほど辛い思いをしながら高校生活を耐えて、努力して手に入れた大学の合格を蹴って、両親を捨ててまでこれまで身を隠してきたのだ。


好きではないとはっきり告げれば、千晃の腕に力が入ったのが分かった。


「それでも俺は別れない」

「…困るよ」

「別に和奏は何もしなくていい。今まで通り嫌なら拒否れ。…今は俺の側にいてくれれば、それだけでいい」


何年かぶりに近くで見る千晃の顔は色気すら思わせる精悍な顔つきになっていてほんのりと香水の香りもして、大人としての成長を意識せざるを得なかった。

かつては逸らされるばかりで分からなかったけれど、まつ毛が長くて瞳の色が実は少し茶色に見える事も——今日、初めて知った。



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