苦くも柔い恋


気付いた時には美琴に向かって分かったよと告げ、彼女はその美しい顔を破顔させた。


「やった!また皆んなで居られるの楽しみだね」

「つーかお前はなに既に受かった気になってんだよ。難関だぞ、んな簡単に言うなや」

「なによぉ、夢語るくらい良いじゃない。それに私達なら大丈夫だって」

「そう言ったヤツほど落ちるって相場は決まってんだよ」

「ひっど!あんまり冷たい事言うと泣くよ!」

「勝手に泣いとけ」


美琴の前では饒舌になる千晃を、これまで何度目にしてきただろう。

結局一応は交際を続けている事にはなっているけど、こんなの誰が見たって好き合っているのは美琴と千晃の方だ。


ドロドロとした黒い感情を抱きながら、和奏はぎゅっと鞄を握りしめた。


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