シュガーくんの秘密のボディーガードちゃん
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「ちょっと蜜生くん、"専属お世話係"ってどういうこと?私、初耳なんだけど!?」
放課後、旧校舎のパソコン室にある秘密部屋にやって来た私は、蜜生くんに詰め寄った。
「だって、彼女は嫌だって言うからさ。ボディーガードとして近くにいてもらうためにもそういう名目がついてたほうが今後やりやすいと思って」
全く悪びれた様子のない蜜生くんはおもむろに自分の席に座るとパソコンの電源を入れ始める。
「たしかに言ったけど……」
「あ、詩桜。ついでにそこの棚にコーヒー入ってるから入れてくれる?お湯はポットにあるから。あと、カフェラテとかもあるし、詩桜も好きなの飲んでいいよ」
カタカタとパソコンを操作しながら、片手間でそんなことを言う蜜生くん。
専属お世話係に関しての話はもう終わりと言うことらしい。
真剣な表情で、パソコンの前に座る彼に内心ため息をつきつつ、私は言われた通り棚にはいっているコーヒーとカフェラテのスティックを取り出すと準備を始めた。
――カタカタ、カタカタ。
静かな部屋に蜜生くんが操作するパソコンのキーボードの音が響き渡る。
マグカップにインスタントの粉を入れながら、私はふと疑問に思っていたことを口にした。
「あの、今さらなんだけど……。本当に校内でボディーガードって必要なの?そもそも中学校に不審者が入ってきたら私が倒すまでもなく、先生達が対応すると思うんだけどなぁ」
ポツリと呟いた素直な問いかけに、蜜生くんは視線を向けることなく口を開く。
「まぁ、知らない大人が侵入してきたらそうだろうね。でも、色々考えられるだろう。教師や学園の生徒として潜入してくる奴らもいる……というか、実際、アメリカにいた頃はクラス担任がそうだったし」
「え……?そ、そうなの??」
思わぬカミングアウトにぎょっとした私はパチパチと目をしばたたかせた。
そんな映画みたいなことが実際に起こったの……?
「学校にいる時間がいちばん無防備なんだよ。教師や生徒として普通に近づかれたら俺だってわかんないし。だから、この学校の生徒については徹底的に調べてる。怪しいところがないかとか、ね?」
ひょうひょうと言ってのけているが、学校の、しかも担任の先生が悪い奴だったなんて、蜜生くんにしたらショックが大きかったはずだ。