マリアンヌに私のすべてをあげる

ご機嫌そうなマリアンヌ


今日はマリアンヌが屋敷に来る日だ。
こないだ約束した通り、絵を描いてやらないと。
楽しみにしてそうだったしなーー。
きっちり画材道具も準備してあるし。
さて、レオナルドの婚約者を出迎えにエントランスへ行きますか。


到着した馬車の扉が開かれ、マリアンヌが降りてくる。

『ご機嫌よう。レオナルド様。お待たせいたしました』

うおーーーッ!!!!
マリアンヌ……今日は顔上げてるじゃん!!
声も元気そうだし。
うつむきマリアンヌは卒業だなっ!!

『待ってたよ、マリアンヌ。絵を描く用意をしてあるから早速庭へ行こう』

『はい。楽しみにしておりました。覚えていてくださって嬉しいです……』

ーーほんとっ……初めて会った日と……違うよな……

ちょっぴし照れながら言ってる感じなのが可愛いじゃんか。
女の私が一切持ち合わせていなかった可愛らしさが、マリアンヌにはまだいっぱいあんだろうなぁ。

❤︎❤︎

『マリアンヌは何描いて欲しい?』

『こちらの庭園に咲く花を描いてもらいたいです』

『そっか…… じゃあマリアンヌも花の前に座ったら? 一緒に描いてあげるよ』

『 …… えっ、私もですか?』

『ただ隣で絵を観てるより、モデルになったらいいんじゃないかと思って』

『で、でも…… 私なんて……』

『決まり!! モデルになってもらう!! ここにイス置くからさ、その花の前に座って』

『はい……』

私は庭のイスを辺り一面に咲きまくる花の前に移動させた。そこへマリアンヌがちょこんと座る。

ーー花とマリアンヌ……雰囲気がピッタリじゃんか!!

けど、ちょっと緊張してんのかな?

『少し表情が堅いよ。もっとリラックスして』

『す、すみません。恥ずかしくって…… レオナルド様にこんなに見ていただけることなんてなかったものですから……』

まともに顔見ねーー婚約者なんていんのかよ!?
どんな結婚生活送るつもりだったんだ?
レオナルドは本当に失礼極まりねぇ男だな!!

ってここにいる今の私がそうだった……。

『これからはしっかり見るからっ!!  マリアンヌを……』

穴あきそうなくらいにマリアンヌの顔を見つめて私は言った。

『それは嬉しいですけど。あまりにじっくりと見られすぎるのも恥ずかしいです……』

『あっ、そっかごめん』

極端なとこがあんだよなーー私は。

『フッフフフ。最近のレオナルド様はお優しく感じます』

おっ!!

『マリアンヌ、いいよ、その表情のままでいて…… 』

『は、はい!! わかりました』

なんかいい絵が描けそうだな。
マリアンヌの表情もやわらいでる。

❤︎❤︎

やっと絵が完成したーーーー!!
だいぶ時間がかかってしまったけど。
でも我ながらなかなかイイ感じに描けてんじゃん!!

『マリアンヌ、出来たッ!! こっちに来て観てみなよ』

『はい…… キャッ、、』

イスから立ち上がったマリアンヌの足元がふらつき、バランスを崩し倒れそうになる。

『あ、危ないッ!!!!』

持ち前の瞬発力の良さで私は速攻マリアンヌを受けとめに行った。

『…… ありがとうございます。長い時間同じ体勢で座っていたので足がしびれてしまって……』

ふーーーーぅ。
ギリギリセーフだっ!!
倒れる前に受けとめられて良かったーー。

『あの……も、もう大丈夫……です』

あっ、、マリアンヌを抱きとめたままだった。

『ごめん。それより怪我はない?』

『レオナルド様に助けていただいたので大丈夫です。ありがとうございます……』

めちゃ顔赤いけど大丈夫かな?
転けそうになったのを私に見られたのがそんなに恥ずかしいのか?

『それなら良かった。そうそう絵だッ!! どう? この絵?』

かなりの自信作に仕上がった絵を、ジャジャーーンな感じでマリアンヌに見せてやった。

『わぁ…… とっても…… とっても素敵です。絵をお描きになるのがお上手だったんですね。レオナルド様と婚約して四年になりますが、初めて知りました。綺麗な絵……』

そりゃーー四年間まともに顔を見てもらえない婚約者のことなんて何も知らんだろうよ。

ーーまっ、この絵を描いてんのはレオナルドではなく私ですが!!

『今日描いた絵はマリアンヌにプレゼントするよ』

『えっ、あ、ありがとうございます。嬉しい…… とても嬉しいです。私のことまでこんなにも綺麗に描いていただけて……』

『えっ、、見たままに描いただけだけど……』

『……お、お部屋に……飾らせていただきます……』

どうしたんだろうなーーマリアンヌ。
顔が赤いまんまだ。大丈夫なのか?
まあでも、私の描いた絵を観ながらすげぇ嬉しそうにしてるし……

ーーご機嫌そうで何よりだ。







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