隠れ御曹司は、最強女子を溺愛したい
私は、悩んだ末……
「離してって言ってるのが、聞こえないんですか!?」
やむを得ず、私は手首を掴まれていないほうの手で、男の人の腕を掴んでねじ上げた。
「痛たたたたっ!」
金髪の人が顔を歪め、悲鳴をあげる。
「痛い、痛いって! おい、離せよ」
「あなたが手を離してくれたら、私も離します」
「分かった。分かったから!」
金髪の人が、ようやく私から手を離してくれた。
「なんだ、この女子! 怖ぇぇ」
私も彼から手を離すと、金髪の人は大慌てで駆けていった。
「ああ、しまった。またやっちゃった……」
「菜乃花!」
走っていく金髪の人の後ろ姿を呆然と見ていると、風音ちゃんが戻ってきた。
「ねぇ、何があったの?」
「実は……」
私は風音ちゃんに、今の出来事を話す。
「さっすが、菜乃花! ヨッ、空手の全国大会優勝経験者!」
「もう。風音ちゃんったら、からかわないでよ。そのせいで、今まで彼氏が出来なかったっていうのもきっとあるんだから。男の子がみんな、私に近づいて来ないんだもん」
風音ちゃんの言葉通り、私は小学6年生の頃に空手の全国大会で優勝したことがあるんだけど……。
私がこうなったのには、理由がある。