隠れ御曹司は、最強女子を溺愛したい


「だからもう、気にすんな」


彗くんが、私に微笑んでくれる。


「なぁ。今日も菜乃花の玉子焼き、ちょうだい?」


彗くんが、私のお弁当の玉子焼きを指さす。


もしかして、前に食べて気に入ってくれたのかな?


「うん。いいよ」


私はお箸に玉子焼きを挟むと、彗くんのお弁当のご飯の上にそっとのせた。


「違うよ。そうじゃなくて……」

「え?」

「菜乃花が食べさせて?」

「ええっ!?」


た、食べさせてって……。


「俺も昨日のお茶会で、菜乃花にケーキを食べさせてあげたでしょ?」

「そっ、そうだけど……」


昨日、嬉しそうに私の口元にケーキを運ぶ彗くんを思いだして、急に照れくさくなる。


「いいだろ?」


私に顔を近づけ、口を開けておねだりしてくる彗くん。


ほんと、ずるいな。こういうの……。


「もう、しょうがないなぁ」


私はもう一度お箸に玉子焼きを挟むと、彼の口に運んだ。


「うん。美味い」


彗くんの優しい微笑みに、ついきゅんとしてしまう。


「そっか。良かった」


それから私と彗くんは、ふたりきりのランチタイムを楽しんだ。

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