打ち上げ花火と儚き君と
6月
出会い結ばれ
1『好き』
「好き」生まれて初めて、誰かに伝えた。
「いいよ、お願いします」彼女の微笑みに、僕は腰を抜かしそうになる。
僕は、同じクラスの西宮葉月に告白した。
西宮さんは、大人しくて物静かで不思議な雰囲気の人で、気づけば僕は彼女の虜になっていた。
優しく、穏やかな微笑みに目が離せない。
「ほんと?」
「もちろんだよ、その…時太くんが嫌じゃなければ」
西宮さんは苦笑いしながら言う。
「とんでもない、嫌じゃないよ。僕からお願いしたんだし。嫌なわけない」
僕が慌てて否定すると西宮さんは嬉しそうに手を差し伸べた。
「じゃあ…改めてよろしく、ね?」
僕もその手を取る。
「うん、よろしく」
彼女の手は白くて細く、美しいななんて思った。
せっかくだし、一緒に帰ってみる事にした。
まだやっぱりぎこちなくて、少し会話しては途切れて、また少し話してはまた途切れての繰り返しだ。
電車に揺られながら西宮さんの横顔をこっそり眺めて見る。
雪のように白い肌と吸い込まれそうな程大きな瞳ー。
いつかイルミネーションに行きたい、あとは花火も。
「ちょ、どうしたの?」
僕の視線に気づいて西宮さんが恥ずかしそうに言う。
「…べ、別に?ちょっと見てただけ…」
「意味わかんない」
「に、西宮さんはえっと…将来どうするかとか決めた?」
話を逸らそうと咄嗟に思いついた質問をする。
西宮さんは少し考えてから「まだ決めてないや」と言った。そっか、と僕は返した後はっとした。
ーえ…?
思わず声が漏れそうになるが無理もない。
先ほどまで笑顔だった西宮さんの顔から笑顔が消えたんだ。寂しそうな顔で、じっと窓の外を眺めている。
でもそれは本当に一瞬。すぐいつもの明るく穏やかな表情に戻り、僕の方を見た。
「また見てる。ってか西宮さんって呼び方ちょっと気になるや」
「え?」
「西宮さんじゃなくて葉月って呼んでよ」
ちょっぴり恥ずかしそうに告げる。
「…葉月。むりむり、恥ずかしい」
「えへへ、でも呼んでくれたじゃん。これからは葉月だよ?」
「わ、分かった…葉月」
さっきの表情については触れないでおこう。気のせいかもしれないし。そうだ、きっと気のせいだ。
僕はそう、自分に言い聞かせた。
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