泣き虫チビパパ×怪力デカママ=
「ぐぎぎぎぎー!!!!!」
つま先立ちをしてボタンに手を伸ばすも僅かにとどかない。あと、せめて1センチ!!1センチあったら届くのに!!

ピッ
「ーーえ…?」
不意に頭上からボタンが押される音がした。それが何の音なのか理解する前に、今度は足元の方からガコンッという音がした。「………へ?」
しゃがんで音のした方を見てみるとそこにはわたしが飲みたかった念願のオレンジジュースがあった。
…何故だ!?奇跡的にボタンに届いたのか!?いや、あの1センチの壁はなかなか越えられないはず…。なら、急激にわたしの身長が伸びたとか…
「…おい…」
いやいや、そっちの方が無理だろうよ自分!成長期の子でもそんな数分で身長伸びないだろ!
「……おい…」
じゃあ、何故だ?考えられることと言えばー…
「………おい……」
「そうだ!きっと妖精さんが助けてくれたんだ!」
「んなわけあるかっ!」
………ん、自分でその考えを否定する前に誰かに否定された…?
………………
「まあ、気のせいで「気のせいじゃねえよ、アホ」
気のせいだと思おうとしたら即座に否定されてしまった。これってつまりー…
そっと後ろを向くと人が立っていた。学ラン着てるから男子学生だね。あああ、別に奇跡的にボタンに届いたわけでも、身長が急激に伸びたわけでも、妖精さんが助けてくれたわけでもなかったんだね。否定しつつも少し期待したわたしがばかだったよ…
「…はあ…」
「おい、何でお前がため息つくんだ。ため息つきたいのはこっちの方だ。お礼言われたくて助けたわけでもないけど、これだけ声かけても無視したあげくため息するって流石にむかつくんだが」
つらつらと話始めた男子学生A。そうだったんだね、ごめんね。ばいばい。
「おいこら待て!無言で去ろうとするな!」
「なんなんですか?ちゃんと謝ったじゃないか」
「謝ってないから!こっち向いたけど顔も合わせずにため息はいて去ろうとしてたから、お前!」
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