求婚は突然に…       孤独なピアニストの執着愛
こういう時、どこで待っているべきだろうか…。

リビング?それとも…寝室?
またここでも悩み立ち止まる。
もはや何が正解で、何が間違えなのか分からない未知の領域…

とりあえず心を落ち着けさせようと、リビングのソファに腰掛けて、TVを付けてソワソワする気持ちを押しやり無意味に、普段観る事も無いお笑い番組なんかを観てみる。

「お待たせ。」
それなのに…ほんの数分で彼がバスルームから出てきてしまうから、

「は、早かったですね…」
思わず本音をポロリと吐く。
パチリとTVを消されて、また抱き上げられる。

「心奈の気が変わると困るから。」
と、惜しげもなく男の色気を漂わせて、寝室にと運ばれる。

フワッとベッドに下ろされたかと思うと、いつの間にか紫音さんに組み敷かれていた。

「…怖かったり、少しでも不快を感じたら殴ってでもいいから止めてくれ。」
そういう紫音さんも何かに怯えている様に見えて、

「大丈夫…紫音さんなら怖く無いです。」
その整った綺麗な顔に、初めて自分から手を伸ばして触れてみる。

ビクッと震えるそのスベスベの頬を撫ぜて見る。紫音さんの全ては私のもの…そう思うと愛しさが込み上げて来て笑顔が溢れる。

「…怯えているのはむしろ俺の方だな。心奈の発作を一度見てるから、また俺のせいでそうなってしまったらって、怖いんだ。」
彼の優しさが身に染みる。

「大丈夫です。」
その言葉が合図になって、キスの嵐が降り注ぐ。顔中至る所にキスを落とされ、耳たぶを舐められ、それだけで心臓はドキドキと早金のように時を刻み出す。

最後に唇を奪われれば、もう彼事以外考えられないぐらい思考が蕩けていった。

いつの間にかパジャマのボタンは取り外されて、ブラとショーツだけの姿にされていて、思わず両腕を交差して隠す。

「隠さないで、全部俺に見せてくれ。心奈の嫌がる事はしないから。」
懇願にも似た視線を向けられ、勇気を振り絞って腕を解くと、サッとブラも取り外されてしまう。

「綺麗だ…。」
指と指を絡ませて固定されれば、彼の視界から逃げる事なんて不可能で、その恥ずかしい時間は何故かしばらく続く。

まるで標本の蝶にでもなったような気分で、羞恥心で耐えられなくなる。

「紫音さん…そんなにじっと見ないで、恥ずかしいです。」
そう訴えるまで続けられた。

「ごめん。つい、感無量で…。この姿を見る事が出来るのは俺だけだって感動してた。」

「もちろんです…だから、恥ずかしいので早く…。」
先を続けて欲しくて懇願してしまう。

彼は嬉しそうに微笑みを浮かべ、
「じゃあ、触るよ全て。君の身体で俺が触れてない場所が無いくらいに…。」
そう言ったかと思うと、胸の頂に指を這わせ優しく胸を揉みしだかれる。

そこからはもう無我夢中で、与えられる快楽に何が何だかわからなくなって…甘く漏れてしまう声も、乱れる吐息も抑える事が出来なくなる。

ありとあらゆる場所をその綺麗な長い指で触れられて、どこを触れられても感じてしまうほど敏感になって、何度も達してしまう。

そして、ついに1つになれた時、痛みなのか、感動なのか喜びなのか分からないけど涙が溢れる。

「大丈夫?痛く無いか?
呼吸をちゃんと、整えて…しばらくこのままでいるから。」
彼だって苦しそうに見えるのに、私の中に身を沈めたまま、しばらく動かないでぎゅっと抱きしめてくれる。

「…紫音さん、大丈夫だから…好きにして。」

「そうやって…俺を煽るな。」
彼は苦しそうに動き始めた旋律に、身体は勝手に揺らされる。

「心奈…愛している。もう、決して誰にも触れさせやしない。」
その言葉だけが脳に焼き付いて、何度目かの頂きで、私は意識を手離してしまった。
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