求婚は突然に…       孤独なピアニストの執着愛
「奥様、どうですか?」
今日もカッコよく着こなして出て来た彼は、さっきとはまるで別人だ。

パチパチパチと拍手を送りながら絶賛する。
「さすが、今日も素敵です。やっぱりその色紫音さんに似合いますね。」
コーディネートが決まって私もテンションが上がる。

今日の衣装はフワッとした半袖の淡い水色のニットに、内は襟付きのワイシャツがチラリと覗く。そして下は濃紺の細身のスラックスを合わせた。長い足が強調されて、格好良さが倍増している。

「ちょっと股が窮屈なんだけど。これじゃあ、座る時に大事なところが…。」

その先を言わせないように慌てて両手で口を塞ぐ。
「辞めてください…下品な事言うのは。イメージを崩さないで。」

そんな彼は意地悪な顔全開で、押さえた私の手のひらをペロッと舐める。
「ひゃっ!」
と、びっくりして手を離すと、

「心奈はもう知ってるでしょ。そんな完璧な出来た男じゃないって事。」
してやったりと笑いながら、私が切ったトマトを一つパクッと食べる紫音さんは、何をしてもやっぱりサマになってしまう。

結婚してからというもの、いろいろ曝け出して来るが、やっぱり変わらず格好良くて、どんな言葉を吐いても許してしまう。

イケメンってタチが悪い…それが、私の旦那様だ。

「心奈も早く着替えておいで。お義母さん達来ちゃうでしょ?」
壁かけ時計に目をやると、いつの間にか30分前…

「大変…!」
バタバタと着替えに走る私を楽しそうに笑いながら見送り、彼はサラッと後片付けをしてくれている。

白地に花柄のワンピースを着て、淡い水色のカーディガンを羽織れば、少しリンクした服装を感じてもらえるかな。なんて、浮かれ気味に鏡で衣装を整え化粧を施す。

何とか身なりを整えて髪をアップにセットしていると、片付けを終えた彼が顔を出す。

「これ。うっかり忘れるとこだった。心奈に似合うと思って買ったんだ。」
そう言って背後から、小さな箱を手渡される。意味も分からずとりあえずパカっと開けると、中には3連のダイヤが付いたネックレス…。

「えっ…⁉︎誕生日とかじゃないですよ?」

「何かの記念日じゃないと送っちゃいけないなんて決まりはないでしょ?」
貸してと言って着けてくれる。

「いいね、似合う。」
鏡越しに爽やかな笑顔を向けられたら、誰もがイチコロだろう。

「ありがとう、ございます。」

「心奈を着飾るのは、旦那である俺だけの特権だろ。」
当たり前だという風に、背後から抱きしめられて振り返ればキスが降り注ぐ。

私達はこうやって、ずっときっと仲良くやっていけるだろう。優しくて過保護で、たまに獣な旦那様と…幸せな何気ない毎日に、感謝して。


                 fin.
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