怜悧な裁判官は偽の恋人を溺愛する
 服から小物に至るまで、比較的手頃な価格のブランドで購入したため、言ってしまえば褒めるほどではない服装だ。内心首を傾げながらも、私はにこやかに返事をした。

「ふふっ、ありがとうございます」

「ところで、高階さんはこういったパーティーに参加するのは初めて?」

「は、はい……恥ずかしながら」

「ああ、やっぱりそうでしたか。……やけに、服装もお化粧も控えめだと思いましたの」

 そう言って、真子は小馬鹿にするような笑みを浮かべた。その口元には、華やかなローズピンクのリップが塗られている。

「パーティーなのですから、そんなに遠慮しなくてもよろしいですのに」

 そのひと言で、私は自分が重大なミスを犯したことに気づく。

 パーティーに参加するにしては、私の格好は地味すぎたのだ。

 実際、私は悪目立ちしてはならないと思い、シンプルで落ち着いた雰囲気のコーディネートに仕上げていた。

 大ぶりなアクセサリーは選ばず、身に着けたのはバレッタと一粒ダイヤのネックレスのみ。

 メイクもラメやパールを避けて、ベージュのマットアイシャドウやピンクベージュのリップなど、肌なじみの良い色で統一した。

 しかし、それらはすべて、間違った選択だったのだ。
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