記事屋 -article club-
「彼女と、何を話してたんです?」


 大和はソファーに腰掛けて、再び椅子に座り込んだ和也に尋ねる。

 ソファーの間のテーブルにはいくつもの書類が広げられ、大和はいそいそと仕事に勤しんでいた。


「別にー。」


 和也は椅子の上で体育座りをして、大和の様子を眺めている。


「裕美様は我が社のお得意様なんですから、お友達の朝美様も丁重に扱っていただかないと困りますよ。

 和也はただでさえ礼儀がなってないんですから。」


「うん。」


 和也は心ここにあらず、といった感じで、煙草の代わりに棒のついた飴を加えていた。

 建物内は禁煙だからだ。




「けど、俺、あの朝美って女、ヤだ。」




 和也の子供じみた言葉に、大和の手が止まる。


「なぜです?」


「だって、明らかに俺らとは真反対だ。

 うかつに関わってヘタな正義感振り回されちゃ面倒くさい。

 何より、あのうじうじした感じ、俺の嫌いなタイプ。」


 言いながら頭の後ろに両手をやり、無意味に椅子を回転させる。

 その様子を眺めながら、大和は口を開いた。


「確かに、あなたの言うことにも一理ありますね。

 まさか本人に向かってそれを言ったりなんてこと、さすがの和也もしないと思いますが、一応言っておきますけど、そういう我がままを言うのは私の前だけにしてくださいね。」


「わかってる。

仕事に支障を出すほど、堕ちちゃいない。」


「ならいいですけど。」


 笑顔で仕事を再開する大和をよそに、和也は窓を見やる。

 車の走行音が、室内を満たしていった。

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