禍津神の刹那の恋 〜鬼に愛されながら、妖の身で人間へと恋をする〜
「この辺りね、心霊スポット!」
女の子に腕を掴まれて、背は高いけれど線の細い青年がこちらへ来る。
見覚えがあるわね……いつも中学校の制服のまま神社にお詣りに来る人間の若い男だ。
「よくはないと思うよ。そーゆーのを楽しむのはさ」
「せっかく来たんだから、オカルト系の土産話も持って帰りたいじゃない」
「俺はここに住んでいるんだよ? そっとしておきたい。何かがいたとしても」
「そうかもしれないけど、怖いからついてきて」
「それなら来なきゃいいのに……」
……恋人同士ではないのかしら。関係性はよく分からない。
彼らの方向へ手をかざした。
赤い魂のような光を宙に放つ。
ふわりふわり、ゆらゆらと。
なんの導きもなく、ただそこかしこに。
赤い彼岸花のように、静寂の中で咲き誇る無数の光。
「な……なにこ……れ……い、いやぁぁぁぁぁぁ!!!」
耳をつんざくような叫び声をあげて、女の子が走って逃げていった。
んっふふ、気分がいいわね。
怖いものを見に来たくせに根性がないわ。
でも……青年の方は逃げないのね。地元の子だからかしら。
禍津神の力を行使して、言の葉を辺りに響かせる。
災いを求めるか 人の子よ
死者の魂のための この送り火の日に
禍津神の怒りを買うのが ご所望か
隠してやろうか 人の子よ
神の御業を 見せてやろうか
おどろおどろしく語りかける。
「……神の御業は、神隠しに遭いたい人間には脅しになりませんよ」
私の声を辿ったようにして、彼が目の前に立った。なぜか視線が合うように感じる。
「これは……なんて美しい禍津神だ……」
……え。私の姿が見えるの?
待って待ってどうしよう。かなり霊感が強い子だったの。こんなこと初めてなんだけど。
すぐ後ろにいたはずの恭介はいつの間にか消えている。
……私を愛しているとか言いながら、肝心な時に逃げないでほしいわ。
「俺をどこに隠してくれるんですか、禍津神。痛くないように、そっとお願いしたい」
「……死にたいのか、人の子よ」
「神の赤に眠らされるのなら、目覚めを忘れてもいい」
「赤の炎に焼かれ、消し炭になってもいいと?」
「神の記憶に残るのなら、存在など消えても構わないですよ」
「数百年も生きるこの私が、ちっぽけな人間の記憶など持ち続けられはしないわ」
「まだ若い神か。人間の歴史よりもずっと浅い。あなたの記憶に少しの間でも残るのなら、よしとしましょう」
どうしよう……振り払えないわ……。
神隠しをするほどの力は、私にはないのだけど……。
女の子に腕を掴まれて、背は高いけれど線の細い青年がこちらへ来る。
見覚えがあるわね……いつも中学校の制服のまま神社にお詣りに来る人間の若い男だ。
「よくはないと思うよ。そーゆーのを楽しむのはさ」
「せっかく来たんだから、オカルト系の土産話も持って帰りたいじゃない」
「俺はここに住んでいるんだよ? そっとしておきたい。何かがいたとしても」
「そうかもしれないけど、怖いからついてきて」
「それなら来なきゃいいのに……」
……恋人同士ではないのかしら。関係性はよく分からない。
彼らの方向へ手をかざした。
赤い魂のような光を宙に放つ。
ふわりふわり、ゆらゆらと。
なんの導きもなく、ただそこかしこに。
赤い彼岸花のように、静寂の中で咲き誇る無数の光。
「な……なにこ……れ……い、いやぁぁぁぁぁぁ!!!」
耳をつんざくような叫び声をあげて、女の子が走って逃げていった。
んっふふ、気分がいいわね。
怖いものを見に来たくせに根性がないわ。
でも……青年の方は逃げないのね。地元の子だからかしら。
禍津神の力を行使して、言の葉を辺りに響かせる。
災いを求めるか 人の子よ
死者の魂のための この送り火の日に
禍津神の怒りを買うのが ご所望か
隠してやろうか 人の子よ
神の御業を 見せてやろうか
おどろおどろしく語りかける。
「……神の御業は、神隠しに遭いたい人間には脅しになりませんよ」
私の声を辿ったようにして、彼が目の前に立った。なぜか視線が合うように感じる。
「これは……なんて美しい禍津神だ……」
……え。私の姿が見えるの?
待って待ってどうしよう。かなり霊感が強い子だったの。こんなこと初めてなんだけど。
すぐ後ろにいたはずの恭介はいつの間にか消えている。
……私を愛しているとか言いながら、肝心な時に逃げないでほしいわ。
「俺をどこに隠してくれるんですか、禍津神。痛くないように、そっとお願いしたい」
「……死にたいのか、人の子よ」
「神の赤に眠らされるのなら、目覚めを忘れてもいい」
「赤の炎に焼かれ、消し炭になってもいいと?」
「神の記憶に残るのなら、存在など消えても構わないですよ」
「数百年も生きるこの私が、ちっぽけな人間の記憶など持ち続けられはしないわ」
「まだ若い神か。人間の歴史よりもずっと浅い。あなたの記憶に少しの間でも残るのなら、よしとしましょう」
どうしよう……振り払えないわ……。
神隠しをするほどの力は、私にはないのだけど……。