モノノケモノ
第一章 狐の子
その日の朝は目覚まし時計が鳴るよりずいぶん早く目が覚めた。

寒いような、それほどでもないような秋の朝。

起き上がるか、もう一眠りするか。

布団の中で、ふすまの模様を見つめながらじんわりと考える。

朝に弱い自分が自然に目覚めた理由はすぐにわかった。

家の中が、そして周りが騒がしい。

家のふすまというふすまを開けてまわっている音と、女の人の叫び声。

祖母の声にしては若い。

そういえば、祖母は昨日から二泊三日の温泉旅行に出かけていたのだった。


では強盗か。

最近の強盗は顔を見られただけで家人を殺しちゃうこともあるらしいから。

よし。

ここは寝たフリをしよう。


ここまで十秒ほどで考え、もう一度布団を頭まで被ろうとした瞬間


目の前のふすまがパーンと音を立てて開いた。


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