モノノケモノ
と、入り口の方からノックの音がした。

振り向けばそこには黒斗さんが立っていた。


「話はもういいか」


私がこくりと頷くと、つかつかと歩いてきて水穂さんを立たせ、戻っていこうとする。


「あ、そうだ、水穂さん」


私が声をかけると水穂さんが「何?」と言いながら振り向く。


「なんで鈴香さんなんですか?

前にも、好きな人いたんでしょう?」


水穂さんは少し悲しそうな顔をした後、今までで一番良い笑顔で言った。


「僕の好きな人は死んじゃったし、鈴香のこと好きになっちゃったんだからしょうがないよ」


そうして水穂さんは去っていった。

水穂さんと別れた私たちは、月浦さんの先導で日垣さんの部屋に戻り、挨拶をしてから帰った。

部屋を出ようとする私に、日垣さんは悪そうな顔で

「あと半年頑張れよ、由香」

と言ったのだった。

この人たぶん私たちの話立ち聞きしてたな。



そうして半年がたち、カラスが判断をくだす日がやってきた。
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